戦争遺物、歴史継承の鍵 那覇で学習会 32軍壕の意義考える


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
アウシュビッツ博物館の展示方法などについて説明する井上阿紀子さん=24日、那覇市首里の県総合福祉センター

 「第32軍司令部壕の保存・公開を求める会」は24日、那覇市の県総合福祉センターで学習会を開いた。約40人が参加した。沖縄戦の歴史継承の在り方を研究する沖縄国際大学大学院生の井上阿紀子さんと、琉球新報社客員編集委員の藤原健さんが講師を務めた。藤原さんは「留魂壕の記憶から何を継承すべきか」、井上さんはアウシュビッツ博物館の展示方法から第32軍司令部壕の展示を考えることをテーマに講演した。

 井上さんはアウシュビッツ博物館の展示物や展示方法を解説した。

 虐殺された人の遺品や、被収容者がガス室に向かう姿の写真などの展示物に来館者が注目してもらうために、解説板の文章は短くなっているという。「来場者が現場や展示物を見て、何を感じ取ってほしいかを考えることは大切だ」と語った。

 藤原さんは、第32軍が県と協議し、沖縄師範学校や中等学校の生徒らを戦場へと動員した経緯に触れた。当時の教育や新聞社を利用し、県民を戦争に協力する体制につなげたことを解説した。

 首里城公園内の留魂壕に鉄血勤皇隊などの学徒隊や、当時の琉球新報など3紙が統合した沖縄新報の拠点があったことを「沖縄が近代国家日本に組み伏せられた象徴である」と説明した。

 第32軍壕の保存・公開においては「日本に言葉や文化が奪われ、スパイ視もされた沖縄の無念の思いや、政府が沖縄を戦争に巻き込んだ歴史も直視する必要がある」と藤原さんは指摘した。その上で「第32軍壕で何があったかだけでなく、歴史的にどういう意味があったかも考えないといけない」と話した。 (狩俣悠喜)