遊びの中で試行錯誤する子どもたち 宮城利佳子(琉球大学教育学部講師)<未来へいっぽにほ>


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宮城 利佳子(琉球大学教育学部講師)

 連日の暑さの中、子どもたちが園庭にプールをつくり始めた園があった。子どもたちは砂場に穴を掘ってバケツで水を運ぶが、水は砂にどんどん浸み込んで、なかなか溜(た)まらない。そこで、水を溜めるにはビニールが必要ではと気付いた子が出た。大きなビニール袋にしようとごみ袋をガムテープでつなぎ、砂場に敷いていく。しかしガムテープは水に濡(ぬ)れると剥がれてしまい、うまくいかない。すると、弁当を食べるときに使うブルーシートを敷けばいいと気付いた子がいて、結果、砂場にプールを作ることに成功した。初めは一人一人、水をバケツで運んでいたが、バケツリレーをしたり、大きなたらいに水を入れたりして、協力して運ぶと効率がいいことに気付き始めていた。

 プールを作りたいという思いを形にするために、みんなの意見を出し合って試行錯誤することは、子どもたちの主体的・対話的で深い学びへとつながっている。保育者は、子どもがプールを作る方法を教えるのではなく、子ども自身の試行錯誤のプロセスを共に経験する。

 別の場所では、水たまりにペットボトルなどを浮かべて楽しんでいる子どもたちもいた。次は船を作りたい、プールに船を浮かべたいと、新たな思いが湧いていた。保育者は、プールに船を浮かべたいという子どもの思いに、大切な船だから水たまりじゃなくて、きれいな水に浮かべたいのかな? などと子どもの思いをくみ取り、子ども自身がいつでも使えるようにブルーシートを傍らに置いておく。子どもは砂場でのプール作りの経験を生かし、船用のプールも作る。

 寄り添う保育者がいないと消えてしまうような、かすかな子どもの思いが、遊びの発展へとつながり、学びへとつながる。