【記者解説】電気料金値上げなら経済に悪影響も 燃料高騰に円安…沖電、過去最大赤字の要因は


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沖縄電力本館ビル(資料写真)

 沖縄電力の2022年度連結決算は、燃料費高騰の影響で連結決算導入後初の赤字を計上する見通しとなった。11月以降、高圧以上の自由料金で「燃料費調整制度」(燃調)の上限を撤廃すると発表したが、今後も高騰の傾向は続くとみられ、収益改善にどの程度つながるかは未知数だ。本永浩之社長は、燃料費高騰が「当社の経営努力で吸収できる範囲を超える水準」と指摘した。

 大規模な水力発電や原子力発電を持たない沖電の電源構成は、20年度実績で石炭(67%)、LNG(22%)、石油(6%)の火力で9割以上を占める。燃料費の取引価格(CIF価格)は6月時点で、石炭が20年4月時点から3・9倍、原油は2・8倍、LNGは1・6倍に上昇した。さらに円安の影響が輪を掛けて収益の悪化をもたらしている。

 燃調には燃料価格上昇分を電気料金に転嫁できる上限があり、現在のように上限を超過した場合は、沖電が超過分を負担する。一方、下限はなく燃料価格が下落するほど電気料金は安くなる。

 本永社長は、08~21年度の燃料費調整額の累計は455億円のマイナス調整となっており、顧客に還元されてきたと指摘。これまでの企業努力を強調し、販売電力量の37%を占める高圧以上の自由料金の顧客に対し理解を求めた。

 一般家庭の電気料金は値上げを国に申請しなければ現状以上の転嫁はできない。同社は明確な言及をしていないが、今後も高騰が続けば国に申請する必要に迫られることも十分に考えられる。

 産業、生活のインフラである電気の料金の上昇は、コスト増によって企業活動や個人消費の落ち込みを招きかねず、経済全体に悪影響を及ぼすことが懸念される。企業経営の維持や電力の安定供給と同時に、影響を最低限に抑える方策が求められている。

(當山幸都)