『琉球薬草誌』 「沖縄薬草」知る必読書


社会
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『琉球薬草誌』下地清吉著 琉球書房・926円+税

 沖縄本島南部の南城市佐敷仲伊保に、薬草栽培から製造販売まで一貫生産している沖縄長生薬草本社がある。同本社の社長である下地清吉氏は長年にわたって県内だけでなく、外国まで出掛けて薬草を調査研究してきた人物である。

 自社農場で約1千種の薬草を栽培し、これまで13種の薬草ブレンド「懸命一番茶」、県内業界初の「春ウコン粒」製品化、38種の薬草ブレンドによる「福寿来A」などのヒット商品を出している。
 特に2005年の第44回全国農林水産祭で「天皇杯」を受賞され、その時に、長年の研究によって開発された新品種(ウコン)を天皇陛下が直接手に取ってご覧くださったことにちなんで「沖縄皇金」が命名され、これが2012年には新品種として正式に登録されている。
 近年、健康志向の高まりによって薬用植物に対する関心が大きくなっているが、一口に薬草と言ってもその種類は膨大な数がある。また、同じ花木でも、葉、花、実、枝、幹、根などの各部位の処方によっていろんな薬効が得られる。身近で見慣れた薬草であっても活用方法や栽培方法を知らない方が多いという。
 本書はそのような方々のために作られたといっても過言ではない。著者である下地清吉氏は、自ら長年にわたってヤマ歩きして観察し、自分で薬草を栽培してきた人である。現場で苦労してきた経験で得られた情報と「薬草活用メモ」は、できるだけ多くの人に薬草パワーで健康を届けたいという思いが込められている。
 本書について「ページ数や薬草の種類が少ないんじゃない?」と思われるだろうが、「分厚い辞典で持ち歩けなくて利用しにくい。持ち運びやすいコンパクトサイズにしてページ数を制限して分冊した方が気楽に利用できる」という筆者の経験から企画されたものである。
 従って、本書では50種類を厳選して書かれているが、今後も第2弾、第3弾と順次分冊して発刊していく計画である。本書は薬草を知りたい人、栽培したり活用したりしたい方にとって貴重なバイブルとなるであろう。(狩俣吉正・元連合沖縄会長)
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 しもじ・せいきち 1945年生まれ。宮古島市城辺で生まれる。沖縄本島で薬草の研究・収集に携わり、40年前に沖縄長生薬草本社を設立。現在、同社社長。