〈118〉前立腺がん 進歩する治療方法


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 前立腺がんは悪性腫瘍とはいっても早期発見すれば完全治癒し、生命予後も良好です。ただしすでにがんが進行した状態で診断される方も少なくはありません。

 前立腺がんの罹患(りかん)率は国立がん研究センターの2014年のデータで男性の第4位。なんと男性の約10人に1人が罹患する悪性腫瘍です。そのため仮に前立腺がんの9割が治癒できたとしても、残りの1割が悪化したとすれば、100人に1人となり、決して少なくはない数字となります。侮ることができない悪性腫瘍なのです。

 前立腺がんの治療方法は基本的には、手術療法、放射線治療、そして前立腺がん特有の内分泌治療が3本柱になります。手術療法は現在「ロボット支援手術」が出血も少なく、侵襲が小さいことにより主流となっています。

 また放射線治療は大きく外照射と内照射に分類され、前者においてはピンポイントで前立腺だけを照射し周辺臓器(膀胱や直腸など)への放射線障害を少なくする治療方法が主体となりつつあります。ちなみに内照射は前立腺自体に小線源と呼ばれる放射線を出す小さな金属を前立腺の大きさに合わせて植え込む方法です。

 しかし進行した前立腺がんに対しては内分泌治療が基本となります。ただし同内分泌治療がすべての前立腺がんに効果があるわけではありません。欧米人では4割程度、日本人でも1割以上の前立腺がんは内分泌治療が効かなくなる去勢抵抗性前立腺がんという状態に移行していきます。

 去勢抵抗性前立腺がんに対しては、以前は主として抗がん剤で治療されてきましたが、現在では新たな内分泌治療薬や、骨転移に対しては骨に集中する放射性同位元素、新たな抗がん剤、最近では遺伝子変異に基づいた分子標的薬等が導入されています。

 また近い将来がん細胞のマーカーを用いた分子標的薬も登場すると考えられます。最後に前立腺がんに限りませんが、早期発見が重要なことは言うまでもありません。

(向山秀樹、南部徳洲会病院 泌尿器科)