沖縄の最低賃金引上げ、「倒産を招きかねない」経営者ら支援策訴え 労働者「33円でもありがたい」


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 異例の物価高を受け、県内の最低賃金は10月6日以降、時給853円に引き上げられる見通しとなった。労働者は一定の期待を寄せる。一方、経営者は新型コロナウイルス禍や原材料費の高騰に続く新たな負担とつながることから、費用増を適正に価格転嫁できるようにするなど支援策の必要性を訴えた。

 「正直もっと引き上げてほしい気持ちはあるが、33円増でもありがたい」。本島中部の介護施設でパート従業員として働くシングルマザーの30代女性は、審議会の答申に一定の評価を示す。

 昨年から新型コロナの影響で仕事を休まざるを得ない日が増え、月によっては手取りが12万円を切る。追い打ちをかけるように食費や電気代、ガソリン代も高騰し、家計を一層苦しめていると感じる。「節約や自助努力にも限界がある。安心して生活するには、せめて時給1300円は保証してもらいたい」と吐露した。

 企業経営者らには理解と懸念が交錯する。

 県商工会連合会の米須義明会長は「昨今の物価上昇にかんがみて、賃上げは納得がいく」と理解を示しつつ、「コロナからの立ち直りもまだ完全ではない中での賃上げでは、企業の倒産を招きかねない」と危惧する。現行の補助金制度を申請する際のハードルの高さにも触れながら、「補助金の枠の拡張を行政に求めたい」と話した。

 県中小企業家同友会の喜納朝勝代表理事は「コロナ禍もあり経営者としては厳しいが賃上げは労働者にとっての幸せでもある」と複雑な心境を明かす。今後もウクライナ情勢を受け原材料価格の高騰により企業収益は伸び悩むと見通し「価格改定をスムーズにできるよう、中小企業に対する施策を考えてほしい」と訴えた。
 (当銘千絵、與那覇智早)