【記者解説】沖縄県「取りうる手だて全てとる」姿勢示す 辺野古設計変更問題で国を提訴 地方自治のあり方問う


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沖縄県庁

 名護市辺野古の新基地建設を巡って県が新たに提訴したのは、軟弱地盤の改良工事に伴う防衛省の設計変更申請を不承認とした県の処分の効力を取り戻すためだ。新基地の完成には設計変更に対する県の承認が必要で、不承認は大きな力を持つ。県は新基地建設阻止のため「取りうる手だては全てとる」(玉城デニー知事)という姿勢をあらためて示した格好だ。

 大浦湾に広がる軟弱地盤を改良するとして、防衛省は大幅な設計変更を申請。県は昨年11月、軟弱地盤の調査が不十分であることなどを挙げ、不承認とした。沖縄防衛局は行政不服審査制度を使って審査請求し、国交相は今年4月、不承認を取り消す裁決をした。

 県が埋め立て承認を撤回した際も、防衛局は行政不服審査制度を使い、国交相が承認撤回を取り消す裁決を出した。こうした国の手法に対し、行政法学者らからは、本来は国民の権利利益を救済するための制度を乱用した「私人なりすまし」だと批判が相次いだ。

 不承認を巡る今回の訴訟でも、私人なりすましの適法性を争うこととなる。

 私人なりすましの手法を使えば、政府は意に沿わない自治体の行政処分を強制的に覆すことが可能になる。玉城知事は12日の記者会見で「この裁判は単に沖縄だけの問題ではない」と強調した。地方自治の在り方について、司法の判断が注目される。
 (前森智香子)