【識者談話】国の姑息な手法、県の提起に意義 辺野古設計変更訴訟 本多滝夫氏(龍谷大教授)


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本多滝夫氏(龍谷大教授)

 防衛省沖縄防衛局の設計概要変更申請を県が不承認としたことに対し、国側は二つの対抗措置をとった。まず、沖縄防衛局が行政不服審査法に基づいて審査請求し、国土交通相が不承認の取り消し裁決をした。さらに、地方自治法に基づき、国交相が県に設計変更申請を承認するよう是正の指示をした。今後を見据えても、「裁決は違法で無効だ」ときちんと示さなくてはならない。その意味でも今回の訴訟の提起は必要なものと言える。

 国民の権利利益の救済を目的とする行政不服審査制度を防衛局が私人になりすまして使い、国交相が取り消し裁決をし、さらに是正の指示を出すのは、姑息(こそく)な手法だ。国は裁決が拘束力を発揮し、県は承認する方向で審査する義務があるから、是正の指示の関係では裁決の違法性は争えないとも主張している。是正の指示を争うためにも、裁決の違法性を争う「関与取消訴訟」を使わない手はない。

 防衛局の「私人なりすまし」の適法性は、埋め立て承認撤回を巡る県と国の訴訟でも争われ、2020年3月の最高裁判決で国の主張が容認された。ただ、今回は埋め立て承認がある中で防衛局が設計変更申請をしており、争いの局面が違う。最高裁判決の射程外だと争う余地はある。

 中身の審理に入り、軟弱地盤の問題に正面から向き合えば、裁判所も工事を完遂できるのか疑問が出るだろう。県の主張が認められる可能性は皆無ではない。
 (行政法)