〈119〉植え込み型補助人工心臓 移植まで待機期間の治療


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 心臓は全身・肺に血液を送るポンプとしての機能を持ち、休むことなく働いています。そのポンプとしての機能が悪くなる状態を「心不全」と呼びます。

 呼吸困難やむくみといった症状や、腎臓や肝臓などの臓器障害を来します。最大限の内科的、外科的治療を行っても心不全症状が改善しない重症(末期)心不全に対しては、心臓移植が唯一根本的な治療となります。

 しかしながら、日本では極端なドナー不足のため、心臓移植登録をしてから心臓移植を受けるまで3~4年の待機期間があります。そのため入院が長期になり、待機期間中に亡くなる方もいます。そこで、心臓移植までのブリッジ治療として植え込み型補助人工心臓治療が発展しています。

 琉球大学では2011年から心臓移植施設である東京大学と連携し、その治療の準備を進めてきました。2013年6月に県内初の植え込み型補助人工心臓手術を行い、これまでに17件の手術を行ってきました。

 心臓移植までの待機期間は、補助人工心臓を装着して外来通院します。中には仕事をしながら外来通院している方もいます。実際の心臓移植は東大病院で受けてもらい、安定したら沖縄に戻ります。これまで3人が心臓移植まで到達し、現在沖縄で元気に社会復帰しています。

 ただ、心臓移植を受けるためには、本人と家族は移植前後の約12カ月間、東大周辺で生活します。沖縄県民にとっては、東京での生活費や東京までの往復の旅費が負担となっています。

 そこでわれわれは、心臓移植の患者と家族を支援するため「芭蕉の会」を発足し、募金による基金化を目指してきました。おかげさまで、多くの県民のみなさまより多大な募金をいただき、実際に経済的支援ができるようになりました。

 現在、琉球大学では9人が植え込み型補助人工心臓装着にて心臓移植待機中です。沖縄県では年間1~2人が植え込み型補助人工心臓治療を必要としており、その分心臓移植が増えることが予想されます。移植施設として、今後は九州大学病院とも連携する予定です。経済的そして地理的な面でも負担が軽減できると考えています。

(稲福斉、琉球大学病院 外科)