協働作業 石原端子(沖縄大准教授)<未来へいっぽにほ>


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石原 端子(沖縄大学准教授)

 沖縄大学には出前講座という、大学の講義を中高校生に体験してもらうコンテンツがある。私はメンタルトレーニングの理論をベースにした「目標設定」のコツを体験的に学ぶ講座を担当している。昨年5月、首里東高校3年のクラスで講座を行った。講座に呼んでいただいたお礼を先生にお伝えした1年後、先生から連絡をいただいた。「多くの生徒が第1志望に合格した」「よいタイミングで出前講座を受講できたことがきっかけになった」―。うれしい報告だった。言うまでもなく、それは先生と生徒の皆さんの、1年間の協働作業の賜物(たまもの)で、私の講座は単なるきっかけにすぎないが、研鑽(けんさん)を積まれている先生方とのご縁を何よりうれしく思う。

 ところで、中学校の部活動改革が進み始めた。市町村ごとの最適解をみつけるための話し合いが始まっている。先日、教員を対象にした調査データをみた。部活動の教育的意義は感じているが、授業準備もままならず、プライベートな時間を削ってまで拘束されている現状に疲弊しきっている心情が垣間見えた。休日だけでなく平日も任せたい教員もかなり多い。一方で、生徒を思い、コーチは誰でもいいわけではないと葛藤する教員もいる。

 さて今年も、首里東高校から出前の注文をいただいた。実は、注文後すぐ講座をするわけではない。事前に先生から意図を伺い、内容を整理し、終了後はフィードバックをしてもらう。先生とのこれらの協働作業は、緊張もするが、最も学びが得られる楽しい時間である。学校にかかわる人が互いを信頼し学び続ける体制とは、きっとこのような地味で地道な会話を続け、互いがブラッシュアップされるなかで構築されていくのだと実感している。