求められる「透明性確保」 条例制定は4割、全国下回る 議会改革㊤<わした議会のいま・2022統一地方選>


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議会報告会で審議の内容などを市民に報告する那覇市議たち=2018年、那覇市役所

 38.1%で全国最低。これは全国1788の都道府県や市町村議会を対象に、議会改革に関する調査を実施している「早稲田大マニフェスト研究所」の2021年調査に対する沖縄の回答率だ。回答率が議会改革の度合いを直接示すものではないが、その重要な要素である「透明性の確保」に消極的と受け取れる数字だ。

 県議会と41市町村議会を合わせた県内42議会のうち、議会改革について定めた「議会基本条例」を制定しているのは2022年8月現在で17議会。制定率は40.5%で過半数を割り、同調査の全国平均59.0%を下回る。

 既存の議会基本条例の多くは本会議など会議の公開、議員活動や収支に関する情報の公開、住民向けの議会報告会の開催などを定めている。

 一方、冒頭の早稲田大調査で全国でも上位に入る県内自治体もある。那覇市議会は21年に全国62位、19年は11位だった。

 那覇市議会は12年、議会の透明化や市民参加などを図るために基本条例を制定した。ユニークなのは議会への陳情者に「意見陳述の場を設けるよう努力」することなど、議会と市民の双方向性や透明性を高める仕組みがある。本会議だけでなく、委員会や多くの議会では非公開で開催される「全員協議会」も受付簿に記名するだけで傍聴できる。条例は「全ての会議」を原則公開することを定めているからだ。

 那覇市議会の「議会改革推進会議」座長を務める野原嘉孝副議長は「陳情書を読むだけでなく、提出者の意見を直接聞くことで理解が深まる」と説明。「議会改革を通して各議員のスキルを高めたい」と説明する。市民への議会報告会は一方的な報告に終わらせず、市民の要望・意見を聞き、特に重要と判断したものは市長に伝えるという。

 市民との「意見交換」からさらに踏み込んだ対応に取り組んできたのは、宜野湾市議会だ。宜野湾市議会は16年、議会と市民の関係を定めた基本条例が施行された。条例制定を機に市民との意見交換会を実施し、市民の要望を踏まえた政策を超党派で市長に「提言」する取り組みを続けてきた。

 「提言」はこれまで7回実施した。22年はコロナ禍の影響でインターネットを活用して意見を募集し、48件の意見が寄せられた。これらを吟味して今年6月、上地安之議長や各委員長が松川正則市長と面談し、自治会の防災組織への市の支援金年3万円を増額するよう提言。市側は8月、議会への回答の場で「自主防災組織の意見も含め、具体的に必要な支援を検討する」と前向きな姿勢を示した。

 県内で議会基本条例制定を訴えてきた玉栄章宏沖国大非常勤講師は「議会改革によって請願・陳情の審議が丁寧に行われる。住民説明会の開催で議会、行政、住民の距離も近くなり、行政や議員の能力向上が図れる。距離が近くなれば投票率の向上も期待できるのではないか」と強調した。

 (’22統一地方選取材班)


 9月11日に県内24市町村議会で統一地方選が実施される。地方議会にどのような動きがあるのか。議会の今を伝え、住民参加の取り組みを考える。