9月11日投開票の沖縄県知事選挙まで1カ月を切っている。現職の玉城デニー氏(62)、前宜野湾市長の佐喜真淳氏(58)、前衆院議員の下地幹郎氏(61)らが立候補を表明している。県内政党などの代表に知事選の意義や取り組みを聞いた。 (’22知事選取材班)
統治機構改革が必要 日本維新の会県総支部 山川泰博幹事長
―意義や争点は。
「次の50年に向けた沖縄をどう作るかだ。インフラ整備は県外に近づいたが、県民所得は全国の約70%。子の貧困率はワーストだ。所得をどう上げるかだ」
―玉城県政の評価は。
「基地問題で県民民意を尊重した姿勢や中学校までの医療費無料化は評価できる。他方、コロナ対策や観光業落ち込みの対応、経済振興は弱いところがある」
―沖縄振興の考え方は。
「振興自体は必要だが、中央集権型の古い体質だ。時の県政に応じ、予算が増えたり減ったりする。国発注公共事業も、約4~5割を県外企業が受注する。県内でお金が回る仕組みが大事だ」
「予算がしっかり取れず、沖縄にふさわしい産業振興・教育・福祉・社会資本整備に使えるような仕組みが作れない。統治機構改革・地方分権が必要だ」
―基地問題の考え方は。
「(辺野古移設での)軟弱地盤の存在で、完成は不可能という専門家もいる。『本当にこのまま進めていいのか』と党本部に訴えている。党本部も『地元の声を聞き、どのように基地問題を打ち出すか検討する』と言っている。普天間の危険性除去としては在沖米海兵隊のグアム移転を進め、辺野古の今埋め立てている部分を活用する」
―選挙戦の取り組みは。
「(知事選主要候補で)維新の政策に近いのは下地幹郎氏だ。党本部にも打診したが、除名された経緯から『党本部としては支持・支援はできない』と自主投票になった経緯がある。個人的には下地氏を応援したい思いはある。(県総支部内で応援を)したいという人は一緒に個人的に動けたらいいと思う」
「統一地方選では公認・推薦・支持の候補を立てる予定だ。街宣カーやSNSなどで発信していきたい」
「基地で潤う」は誤解 れいわ新選組 山本太郎代表
―意義や争点は何か。
「復帰50年で迎える大事な知事選だ。玉城デニー氏が出した建議書で、半世紀たっても沖縄の課題が解決されていないことを可視化した。米中の緊張感を高め、台湾有事をあおる勢力が中央政界の中枢にいる。沖縄、ひいては日本が、緊張の最前線に置かれる流れに歯止めをかけなければいけない」
―玉城県政への評価は。
「子どもの貧困への対策が評価できる。沖縄は、県内の子ども約3人に1人が貧困状態にある。貧困のループを解消する抜本対策が必要だが、国の対応は不十分だ。そんな中で、中学卒業時までの医療費無料化を実現させたのは大きい。米軍のずさんな新型コロナ対策を全国に伝え、全国知事会と連携した日米地位協定改定に向けたネットワーク作りも評価できる。今、生きる人々への責任を果たすという県政だった」
―沖縄振興の考え方は。
「玉城氏が示す沖縄振興の方向性は、賛同する点が多い。米軍基地の返還を促し、商業施設の誘致など跡地利用を振興につなげるという考えなどだ。基地があるから潤うという誤解がまかり通っているが、県民所得に占める基地収入の割合は約5%にすぎない。産業の核である観光を大きくクローズアップしていくべきだ。沖縄だけでできることには限界がある。コロナ禍でもけちくさいお金の出し方しかしない国の政策で沖縄の観光産業は大きく傷ついた。積極財政で支えていかなければいけない。政策転換が必要なのは沖縄ではなく国だ」
―統一地方選など今後の沖縄での取り組みは。
「24日には宜野湾市議選への挑戦を発表する。既に公募に応募いただいている方もいる。先々の選挙に向けてもアジャスト(調整)できれば準備を進めていく」