議会改革の中でも近年重視される傾向にあるのは、情報通信技術(ICT)の活用による議会情報へのアクセスの拡大だ。本会議や委員会のネット中継や議事録のデータベース化など、県内の議会でも導入事例は増えてきている。全国の地方議会の改革度を調べ、ランキングを発表している「早稲田大マニフェスト研究所」のアンケートも、近年は情報通信技術の活用に関する設問が増えてきている。
琉球新報が県内市町村議会に実施したアンケートによると、定例会の中継や録画をインターネットで公開しているのは全41議会中22議会で過半数の53.6%に上り、「していない」の11議会(26.8%)を上回った。「その他」の8議会(19.5%)は庁舎内や公民館で中継を公開しているといった回答だった。
議場の中継だけでなく、情報通信技術を活用し、市民の議会参加の障壁を取り除こうとする取り組みもある。浦添市議会は2020年4月、県内では珍しい、議場での議員や執行部とのやりとりをリアルタイムで文字起こしして映し出すモニター2台を傍聴席に設置した。文字起こしはアプリを活用。議場の音声を起こした文字情報をモニターに即時送信し、表示する仕組みだ。
浦添市議会は19年の「議会改革等に関する調査特別委員会」で、点字ブロックの活用や文字起こしモニターの設置、傍聴規則などの書類の点字化などを決めた。障がいの有無に関係なく議会を傍聴できる環境づくりに取り組んでいる。
議場での文字起こし表示は県内では初の取り組みで、同市議会担当者によると、全国的にもあまり例がない。
一方、ICT活用の必要性は感じていても、特有の事情で整備が進まない議会もある。
与那国町議会のホームページは議員名簿、一般質問通告、議案の3項目が18年4月に公開されて以降、「準備中」と表示されたまま。議会の中継や録画も見られない。
「現時点ではインターネットへの対応が難しい」。与那国町議会事務局の南風原弘明局長は苦悩を明かす。事務局の定員は2人。だが現状は町職員を定年退職した南風原局長が再雇用され、1人だけで業務をこなしている。町民に議会情報を発信する媒体は年4回発行する「議会だより」のみで、南風原局長が発行を一手に担っている。
人手不足で臨時職員を募集しても、応募もない状態だ。「ホームページに関する問い合わせもある。本当は詳しく議会のことを載せたいが、現状では難しい」と明かす。
町議会改選後の9月定例会では、ホームページ作成の予算獲得を目指すという。南風原局長は「ホームページが作成されれば情報公開しやすくなる。議員情報や質問内容を随時掲載できる」と改革に期待を寄せる。
(’22統一地方選取材班)
9月11日に県内24市町村議会で統一地方選が実施される。地方議会にどのような動きがあるのか。議会の今を伝え、住民参加の取り組みを考える。