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「貧」と「困」抱える子どもと向き合い 地域で子どもたち支える 教育支援NPO法人エリアマネジャー・宇地原栄斗さん<県人ネットワーク>


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
宇地原 栄斗さん

 沖縄が直面する子どもの貧困と格差の問題は見過ごせない。そんな高校時代に抱いた思いが今、自らのミッションとなった。東京大学を卒業して就職したのは認定特定非営利活動法人(認定NPO法人)Learning for Allだ。「貧」と「困」、生きづらさを抱える子どもと向き合っている。

 沖縄は3人に1人の子どもが貧困状態にあると言われる。国内でもワーストだ。そんな郷里を離れて入学した大学の学生は中高一貫の進学校の出身者で、親の所得も上位数%、いわばハイスペックな出自が多い。東京という政治、経済の中心地にいて郷里とは「ものすごいギャップを感じた」と言う。

 「経済的困窮や、1人親世帯の苦労ある生活、虐待といった人の痛みが分からない、想像できない人は学生に限らず多いのではないか」。多くの人が一見不自由なく生活を送れているように見えるのも東京の現実だ。そのため貧困の実態が見えづらいとも言われる。

 貧困問題の背景には一筋縄でいかない重層、複雑な問題が横たわる。「こうすればああなる」という条件関係では済まない。政治、経済、社会、福祉などあらゆる知見へアプローチする目配りが欠かせない。

 「子どもの貧困のような問題に対して、自己責任のような捉え方をよく耳にする。経済的な理由で進学を断念した人に対して『もっと勉強して奨学金とか取れば良かったのに』と安易に問題を捉えてしまう。同じように自分も想像力が欠ける瞬間があるかもしれない」。そんな自らにも嫌気が差し、理論上の勉強だけではなく「もう現場に飛び込むしかない」と意を決した。

 経済面だけでなく、福祉面などを起因とする荒涼とした現場もある。しかしそこには希望につながる萌芽もそこかしこに。「経済的な理由で大学へ進めなかったり、高校を中退したりと個人の努力ではどうにもならない中でも必死に頑張る多才な子どもたちがいる。そんな子たちからひらめきをもらうことも」

 戦後、灰燼(はいじん)の中から生活を立て直し豊かさを追い求めた半面で失うものもあった。社会の痛みも加速し、その痛みを一身に被ったのが子どもたちかもしれない。それをどう和らげ社会を再興再編すれば良いか。

 「多くの事例に接してきた。そしてこれからも。1人も取りこぼさず、持続可能な地域をつくることはできる。地域の中で子どもを支える仕組みを徹底的に作り込む。それをほかの地域でも再現したい」

 リアルな子どもの学習支援の現場に携わりながら、自治体への政策提言にも取り組み「シン・地域」「シン・社会」づくりを目指す。
 (斎藤学)

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 うちはら・えいと 1995年12月に那覇市で生まれる。小中学校、開邦高校を経て東京大学に入学し教育学部で学んだ。現在Learning for Allで葛飾エリアマネジャーを務める。