沖縄の日本復帰から50年間、「基地問題」は選挙の争点であり続けている。今年の知事選でも米軍普天間飛行場の辺野古移設などの基地問題は争点の一つになりそうだ。琉球大学の駐留軍用地跡地利用研究チームに所属していた同大学4年の根波朝崚(ともたか)さん(23)は「返還が決まっている基地はある。しかし、返還後の準備はまだ不十分だ。跡地利用などの未来像を十分に議論する時間が必要だ」と現在の基地問題を見つめている。
同チームは基地の跡地利用までの道筋を、米軍基地のあるドイツをモデルケースとして比較研究した。参加した理由は、自身のドイツ語スキルを生かしたいと思ったから。基地問題については「人並みの理解」程度だった。跡地利用の方法を徹底的に議論するドイツの事例に触れるうちに、沖縄にはまだ議論が足りないと感じた。
2019年に研究のためドイツのベルリンとハンブルクを訪れた。沖縄の普天間飛行場跡地利用のモデルとして、ベルリンにある旧米軍飛行場のテンペルホーフ野原を視察した。旧飛行場の跡地利用は、市民主導で話し合いが進められた。現在は公園として利用されている。いったんは公園となったが、十分な意見交換を経て今後、別の形に作り替える可能性もあるという。
帰国後には、普天間飛行場が返還されたと想定して、沖縄で社会人と学生で跡地利用を考える企画を実施した。普天間飛行場がかたどられた画用紙を広げ、意見を出し合った。「学生レベルだ」と厳しい指摘もあったが「それも含めて面白い。意見を出せる場を作ることが大切だ」と振り返る。
基地の研究をしていると「賛成か反対か」といった対立構図に当てはめられることもある。しかし、対立ではなく「未来を考える」という統一点で「言いたいことを言える場を作りたい」と解決に向けて、徹底した話し合いを求めている。
「『跡地に遊園地を作りたい』という夢物語でもいいから基地問題のイメージを持つことが基盤になる」と話す。同じ若者に議論への参加を呼び掛け、「未来のために」と行動を続ける。
(金盛文香)