なぜ少ない、女性議員 性別役割分業が根底に ジェンダー<わした議会のいま・2022統一地方選>④


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 沖縄県内市町村議会で女性議員がいない「ゼロ議会」は10町村あり、このうち5村で一度も女性議員が誕生していない。全市町村議会の定数に占める女性の比率は11.0%で、2021年度の全国平均を6.5ポイント下回る。今回の統一地方選では県内29市町村議員選挙が実施されるが、男性が立候補予定者の9割近くを占め、改選後も女性議員が少ない状況は続く。

 10年、宮城千賀子さん(60)は国頭村議選に初当選し、村内初の女性議員となった。中高生の子どもを育てていた。県内では「家事や育児を担うのは女性」といった、性別役割分業に基づく固定概念が根底に見られ、出馬時に家族の理解が得られない事例も多い。だが夫は「あなたぐらい元気のある人が必要だ」と背中を押した。

 子育て中の若い人たちでも出馬しやすい雰囲気をつくるために、選挙カーを使わないなど出費を抑え、自分でできる範囲で選挙活動をした。

 議員活動を通して、政治に女性の視点が必要だと実感した。公共施設へのトイレ設置で男性は個室を増やすなど見えるところに着手するが、女性は便座とドアの間隔は狭くないかなど、細かいところに気が付くと指摘する。

政治には女性の視点が必要だと語る国頭村議の宮城千賀子さん=17日、国頭村議会

 任期中は女性議員を増やそうと、村内の催し物などで声をかけたが反応はなかった。引退を決めて後継者を探していた昨年末以降は「自分には務まらない」と、40~50代の女性3人に断られた。宮城さんは、女性は謙遜してしまい「議会で執行部に物申しができるか自信がないのだと思う」と分析する。

 かつて村内では、区長やPTA会長など地域の代表は男性が担うことが多かった。約14年前、宮城さんがPTA活動をしていた時には女性が役員の仕事を引き受けても、その夫が後から妻に代わって断ることもあった。

 近年、国や企業が女性の社会進出を施策として取り組み始めたが、女性は男性に比べ人を率いたり議論に加わったりする機会がまだまだ少ない。子どものうちから意見を述べる力を身に付けてもらおうと、任期中は十数年ぶりに子ども議会を復活させた。「女性だからと遠慮せず、自分の意見を述べられるような社会になってほしい」と強く願う。

 21年に本紙が女性の政治参画を阻む壁について連載した企画「『女性力』の現実」では、県内女性議員から「選挙時にセクハラや偏見がある」「議員活動と子育ての両立が難しい」などの指摘が上がった。

「男らしく」「女らしく」ではなく「自分らしく」の社会をと語る島袋恵祐県議=15日、那覇市の琉球新報社

 男性優位の今の社会に「男性もおかしいと気付いて声を上げないといけない」と唱えるのは、県議1期目の島袋恵祐さん(35)だ。選挙期間中は街頭演説や集会で「候補者の妻」が男性候補者の一歩後ろに立つ。選挙事務所でもお茶くみは女性、男は座って話すという空気感が漂う。「性別によって価値観を押しつけるのはおかしい」と力を込める。

 自身は現在のパートナーに出会って「ジェンダーの呪縛から解き放たれた」。それ以前は家事は女性がするものだと無意識のうちに感じ、結婚後に女性が夫の名字を名乗るのは当然だと思っていた。だがパートナーと会話を重ねるうちに、改姓によるキャリアへの影響など男女間で不公平があると感じた。現在は誰もが自分らしく生きられるような社会の実現に取り組みたいと考えている。

(’22年統一地方選取材班)
(おわり)