〈120〉婦人科がんの分子標的薬 課題残るも大きな期待


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 みなさんは抗がん剤にどのようなイメージをお持ちでしょうか? これまでに広く用いられてきた抗がん剤は、殺細胞性の抗がん剤と呼ばれ、映画やドラマにより吐き気や脱毛などの副作用が印象づけられてきたかと思います。

 婦人科がんの治療ではプラチナ製剤やタキサン製剤などが広く普及し、治療に重要な役割を担っています。ここ数年はその効果を高めたり、再発を抑えたりすることを目的として、分子標的薬と呼ばれる、新しい抗がん剤の研究・開発が進み、婦人科がん領域でも使用されるようになりました。

 がんの免疫を利用したペムブロリズマブや血管新生阻害薬であるベバシズマブ、損傷したがん細胞のDNAの修復を阻害するオラパリブやニラパリブ、血管新生以外に腫瘍増殖なども阻害するマルチな働きを持つレンバチニブなどが一定の条件の下で使用が可能であり、がん治療の新たな選択肢として大きな期待が寄せられています。

 しかし、分子標的薬を投与する前には定められた検査(コンパニオン診断)が必要である場合や、その検査で遺伝性のがんのリスクが判明する可能性があります。また、分子標的薬にはこれまでの抗がん剤にはない特有の副作用が生じるリスクがあるため、多くの専門科の先生たちの協力・管理の下で使用されることが望ましいと考えられます。

 また、近年ではがん遺伝子パネル検査によって、遺伝子変異とその遺伝子変異を標的とする分子標的薬を検索することが可能になりました。ですが実際に遺伝子変異を見つけ、対応した分子標的薬にたどり着いて治療が開始できるのはごく少数に限られており、まだまだ課題も残ります。

 婦人科がん診療の発展は日進月歩であり、がんの特性を知り、患者さん個々に対応した治療戦略を立てていく必要があります。これからも患者さんのために学び続けることが私たち婦人科医にも求められています。

(平良祐介、琉球大学病院 産婦人科)