【識者談話】県の主張を制限せず判断を 辺野古「是正指示」取り消し求め提訴 徳田博人・琉球大教授


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徳田 博人(琉球大教授)

 国土交通相による「是正の指示」は違法だとする県の審査申し出に対し「国地方係争処理委員会」は、国交相の裁決の有効性を根拠に国の主張通りに審査の範囲を狭めて県の主張を制限し退けた。係争委の判断は、国と自治体の対等平等性という地方自治の観点が欠落している。地方自治を守るため、24日の県の提訴は必要なものだ。

 沖縄防衛局の設計変更申請に、県は調査の不十分さなどを挙げて不承認とした。県の判断に不服があるなら防衛局は行政事件訴訟法に基づいて承認を求める義務付け訴訟を起こし、県の不承認が適法かどうか司法判断を仰ぐのが本筋だ。

 その道を選ばず、防衛局は国交相に不承認を取り消す裁決を求め、国交相は取り消し裁決をした上で、さらに承認せよとの是正の指示をした。「裁決」と「是正の指示」という別制度を意図的に連動して用いることで不承認とした県判断が正しかったかどうかという、本質的な審査を阻んでいる。

 係争委は地方分権改革の目玉として、国と地方の争いを公正に調整するために設置された。その経緯を考えると、今回の是正指示について、県の不承認処分を取り消した裁決を前提とするのは誤りだ。裁判所は県の主張や審査範囲を制限せず、公正平等に全体を見通して判断すべきだ。