沖縄本島中部・今後の経済課題 昼間の人口増が鍵に 「稼げる企業」で活性化 前屋誠・コザ信用金庫専務理事


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 日本復帰50周年を迎えた沖縄経済は、観光の最盛期である夏場も、新型コロナウイルス感染症の影響が続いている。各地域の均衡ある発展が求められる中、本島中部地区を中心に継続的に企業動向を観測しているコザ信用金庫の前屋誠専務理事に、今後の中部地区経済の課題について、分析を寄稿してもらった。

 月間平均滞在人口を見ると、沖縄市、うるま市、宜野湾市など中部地区の都市では、昼間の滞在人口は減少し、平日は地区外に働きに出るケースが多いことがうかがわれます。一方、北谷町は昼間の滞在人口が増え、観光関連をはじめとする働き口に地区外から人が集まっている様子がうかがわれます。

 県内地区別のハローワークの有効求人倍率のグラフからは、中部地区(ハローワーク沖縄)の有効求人倍率が一貫して最も低く、人手不足が続く中でも求人が少ないことが分かります。

 二つのデータが意味するのは、中部の都市には相対的に働き口が少ないということです。沖縄市の人口は那覇市の約2分の1ですが、事業所数は約3分の1、企業所得は約5分の1にとどまっています。沖縄県の課題である県民所得の向上のためにも、稼げる働き口を増やすことは重要です。

 中部地区では北谷町など一部を除き、南部や北部に比べて観光の恩恵が少ないのが特徴ですが、今後中部の働き口を増やし、昼間の滞在人口を増やすことが求められます。昼間の滞在人口が増えれば、飲食や買い物のニーズが生まれて商店が増え、地域の活性化につながります。沖縄市、うるま市は県内第2、第3の人口を擁し、潜在的な消費需要を持っています。

 例えば沖縄市では一番街のスタートアップ拠点を中心に、若者がITも駆使して新たな発想で起業する動きが広がっています。今後、空き店舗の有効活用によって、起業する若者のワーキングスペースを確保していくことが課題です。

 またコロナ禍を契機に創業を決意するとか、補助金等を活用して新たな事業分野にチャレンジする動きもみられ、行政や金融機関による一層の後押しが望まれます。

 既存企業の事業承継を進めて事業を存続させていくことも必要です。事業承継には承継計画の策定や後継者へのノウハウの引き継ぎをはじめやるべきことがたくさんあり、相応の時間を要します。事業の引き継ぎはまだ先と考えていても、早期着手が重要です。次の50年の発展に向け、中部地区に「稼げる企業」が増えていくことに期待したいです。


 まえや・まこと 1959年3月生まれ、東京都出身。早稲田大卒。82年に日本銀行に入行し、調査部門を長く経験。2015年にコザ信用金庫入庫。理事総合企画部長を経て、19年6月から専務理事。