ローミング導入、政府が検討へ 今秋にも有識者会議 通信障害での緊急通報支障受け


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
イメージ写真

 携帯電話会社が通信障害を起こした時に、利用者が他社の通信網を使って通話などをできるようにする「ローミング」の導入機運が高まっている。7月のKDDI(au)の大規模障害で消防や警察への緊急通報に支障が出たことがきっかけだ。KDDIは今月も障害を起こした。非常時の連絡手段を確保する重要性が増す中、政府は実現に向けて今秋に有識者会議を立ち上げるが、発動条件など検討課題も多い。

 ローミングは通信会社同士が連携し、自社のサービス提供エリアの外でも利用者が通話やデータ通信をできるようにする仕組み。日本から海外旅行に出かけた人が、日本で契約している携帯電話を現地でそのまま使う「国際ローミング」は代表例だ。

 7月に起きたKDDIの大規模障害は約61時間に及び、傘下の沖縄セルラー電話を含む延べ3千万人以上の利用者に影響が出た。事態を重く見た金子恭之総務相(当時)は、緊急時のローミングを「重要課題の一つだ」として、9月にも有識者会議を開き、年内に基本的な方向性を示すと表明した。

 ただ、乗り越えるべき課題も多い。論点の一つは、緊急通報が途切れた時などに消防や警察が通報者に電話をかけ直せる「呼び返し」の機能をどうするかだ。

 現在は呼び返し機能を付けることが携帯大手に義務付けられている。ただ、障害時にローミングを使って緊急通報した場合は呼び返しができなくなる事態も想定されるため、通信業界では機能がない形での導入も検討すべきだとの意見がある。

 どのような時にローミングを発動するかといった条件のほか、導入や運用にかかるコスト負担の在り方も論点となる。検討すべき項目は多岐にわたり、議論には曲折がありそうだ。

(共同通信)