2023年度概算要求で、沖縄関係予算は、前年度の概算要求に続き2年連続で3千億円を割り込み、一括交付金の増額もかなわなかった。一括交付金は22年度の概算要求額981億円と比較すると219億円の大幅減。22年度概算要求は前21年度当初予算と同額だった。概算要求時点では前年度の当初予算と同額を求めながら、年末の予算編成で一気に減額するという流れが常態化しつつある。
県が使途を決められる一括交付金は、沖縄の自立を掲げる沖縄振興の趣旨にかなう制度だ。政府側は「執行率の悪さ」や「成果の乏しさ」などを強調するが、沖縄振興が目指す「自立型経済」の構築に資する一括交付金が集中的に減額されてきた経緯について明確な理由は示されていない。
一方、政府は西銘恒三郎前沖縄担当相が取りまとめた四つの重点分野からなる「西銘大臣ビジョン」に約90億円を計上した点を強調した。ただ、政策には従来の施策を踏襲した部分も多く、予算の約6割を沖縄科学技術大学院大学(OIST)関連経費が占める。国直轄の「沖縄振興特定事業推進費」を活用する方針も示しており、新たに始動する第6次沖縄振興計画の主導権を握ろうとしているようにも映る。
減額が目立つ沖縄関係予算と対照的なのは、防衛予算だ。過去最大の5兆5947億円を求め、多くの項目で金額を示さない「事項要求」が盛り込まれた。「5年以内の防衛力の抜本強化」を掲げる政府方針が色濃く反映された。米中対立による台湾情勢緊迫化の影響も色濃く、米軍と自衛隊の「南西シフト」に関連する予算項目も目立つ。防衛強化に伴い、沖縄が軍事的な緊張の最前線に立たされる構図がより鮮明になっている。
沖縄振興の面では県の自主性を奪うかのように振る舞い、安全保障に関わる国防の負担は押しつける。政府が掲げる「負担軽減」は絵に描いた餅になりつつある。
(安里洋輔)