上場に備え価値向上 オリオン軍用地売却 飲料、観光に注力


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
米軍牧港補給地区に所有する土地の譲渡を報告するオリオンビールの村野一社長(右)ら=1日、那覇市久茂地の琉球リースビル

 オリオンビール(豊見城市、村野一社長)は、自社が所有する米軍牧港補給地区(キャンプ・キンザー、浦添市)内の軍用地の売却を決めた。経営資源を主力分野に集中させることで成長や発展につなげ、企業価値を高めて将来のIPO(新規株式公開)に備えたい考えが念頭にある。

 1日の会見で村野社長は、2022年4~8月の酒類清涼飲料事業の売り上げが、新型コロナウイルス禍前の19年並にV字回復していると明かした。「県外や海外、EC(電子商取引)での進展が著しい成長を遂げている」という。観光客などの回復は途上ながらも業績が向上していることに手応えをつかんでいる。今回の売却はポートフォリオ(資産構成)の見直しだとして、収益悪化の穴埋めではないと強調する。他の不動産などの売却については「これ以上の資産売却は考えていない」(亀田浩取締役専務執行役員)と否定した。

 コロナ禍の収束後も見据え、土地売却で得た数十億円規模の資金を元に経営環境の改善に乗り出したい考えだ。具体的には、ビール工場の設備投資やホテルロイヤルオリオン(那覇市)の改装工事、同ホテル周辺の再開発、社内基幹システムのデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進を図る。

 一方でコロナ禍などの影響もあって、オリオンの決算は減益が続いている。早期退職制度の導入や東京事務所の閉鎖など、人員体制にも変化が生じている。土地売却をきっかけに、本業のさらなる成長という目に見える結果を残して行けるか、経営陣の手腕が問われる。   (小波津智也)