長引く原油高や原材料価格の高騰に急激な円安進行が重なり、食料品や日用品の値上がり傾向が続いている。消費者の負担が増す一方、県内の中小、小規模事業者も収益を圧迫され窮地に立たされている。
県豆腐油揚商工組合の平良恵美子事務局長は、原料の大豆の価格高騰が著しいと訴える。「豆腐業界は立場が弱く、値上げがしにくい。廃業の危機にある小さな企業も多い」と苦悩を漏らす。
豆腐を中心に扱う池田食品(西原町)は、6月に商品の販売価格を5~10%値上げした。それでもスーパーなどから値上げを受け入れてもらえないケースもあり、苦境に立たされている。同社の瑞慶覧宏至社長は「人件費削減はしたくない。燃料費の見直しや節電などで固定費を減らしやりくりしている」と話した。
南城市の小規模豆腐店では、利益はほとんどない状態だが、納品先からの返品を恐れ値上げはしていない。「消費者も安いのが一番良いと思っている。周りと同じ値段ではやっていけないため、値上げはできない」と肩を落とした。
小麦粉や原油価格の高騰で、パン製造業も苦しい状況にある。オキコ(西原町)では現在、昨年7月比で14%ほど値上げしている。収益は回復しつつあるが、材料の仕入れ先からはさらなる価格の改定交渉があり、見通しは立たない。
担当者は「製造ルートの変更や時間短縮などで生産工程の見直しを図ってきたが、これ以上削れるものはない」と吐露した。
生産コストや輸送料、梱包資材費が軒並み上昇したことで、農作物の販売価格も上がっている。
輸入青果を主に取り扱う那覇青果物卸商事業協同組合によると、フィリピンやエクアドル産のバナナの卸売価格はこれまで1ケース(13キロ入り)約2500円だったが、7月頃から2750円程で取引されている。
担当者によると、特に価格が変動しにくく「物価の優等生」とも言われるバナナは約5年ぶりの値上げだった。フィリピン政府から、生産コストの膨張などで窮地に追い込まれている現地の生産農家を守るための強い要請があったと説明する。「農家も卸も小売業も厳しい状況は変わらない。今後も外国産青果物の単価高は続く可能性がある」と述べた。
県産や県外産の青果物を扱う沖縄協同青果も、船舶の燃料費高騰などを受け、一部の県外産野菜や果物の取引価格が上昇傾向にあると指摘する。
さまざまな商品の値上げが相次ぐ中、イオン琉球では北海道産のキャベツやダイコンなどを半分や3分の1の小分けパックにしたり、ニンジンやタマネギをばら売りしたりするなど、必要な分だけ手に取れるようラインナップを広げた。
担当者は「少しでもお客さまの家計の負担が軽減できるよう、できることをやっていきたい」と述べた。
(当銘千絵、與那覇智早)