膨大な資金と長い年月…辺野古移設、政府有識者から費用対効果に疑問の声 「時間と効果をもっと考えてほしい」 安保戦略改定の意見聴取要旨公開


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新たな護岸建設が始まった辺野古の新基地建設現場=2022年3月27日午前10時40分ごろ、名護市

 【東京】外交・安全保障政策の長期指針「国家安全保障戦略」など、安保関連3文書の年末までの改定に向けて政府が実施した有識者からの意見聴取で、有識者から普天間飛行場の名護市辺野古移設について、費用対効果を疑問視する意見が上がっていたことが3日までに判明した。

 防衛力を維持・強化する立場の有識者からも、膨大な経費と長い工期を要する辺野古新基地建設の非合理性が指摘されたことになる。政府が防衛力の抜本的強化を掲げる中、普天間飛行場の早期危険除去という当初の目的につながらない辺野古新基地建設に約9300億円を費やすことの妥当性が揺らいでいる。

 政府は防衛力の抜本的強化を目指し、国家安全保障戦略のほか「防衛計画の大綱」と「中期防衛力整備計画」を改定する方針。1月から計17回、非公開で有識者計52人から見解を聞き取った。政府側は内閣官房や外務省、防衛省の幹部が出席。内閣官房が1日に議論の要旨を公表した。

 公表された要旨のうち「防衛力強化・防衛関係費」の項目で、普天間飛行場移設を巡って「膨大な資金と長い年月のかかる事に力を入れることには疑問。時間と効果をもっと考えてほしい」と記されている。発言者名は明記されていない。

 防衛省は辺野古新基地建設で着工後の追加調査に基づいて軟弱地盤の存在を認めた。地盤を改良する工事を追加した結果、予定費用は当初の2・7倍に当たる約9300億円に膨らんでいる。

 5年としていた埋め立て期間も、新たな設計では、飛行場整備まで9年3カ月。米軍が使用するまでには早くとも12年かかる。このため、県は普天間飛行場の早期返還や危険性除去につながらないと指摘している。

(明真南斗)