【記者解説】元患者と家族が当たり前に暮らせる社会へ 社会全体で解決模索 県ハンセン病問題解決推進協初会合


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沖縄県庁

 ハンセン病元患者らの課題を共有し、解決に向けて取り組む足場が初めてつくられた。問題解決推進協議会の設置は当事者らが粘り強く行政に働きかけ、社会に訴え続けた成果である。地域社会での生きづらさが原動力になっており、問題は深刻だ。

 元患者の多くは後遺症を抱えているが、差別を恐れて病歴を明かせず、地域の医療機関を受診しないまま悪化させることも多い。家族らと距離を置き、単身で暮らし、同じ理由で行政福祉を利用できず生活困難に陥っている状況もある。

 協議会設置を県に求めてきた「ハンセン病回復者の会」は、ハンセン病問題が過去のこととされている現状に危機感を持った元患者らが2018年に立ち上げた。既存の関係団体とは違い、初めて当事者でなくとも会員になれる会則とした。「問題解決は当事者だけでは難しい。社会全体で関わり、考えてほしい」(平良仁雄共同代表)との思いからだ。

 協議会設置はゴールではない。これを機に「元患者と家族が当たり前に暮らせる地域社会の実現」に向け、社会全体でもう一度、向き合う必要がある。
 (佐野真慈)