任期満了に伴う第14回県知事選は、11日の投開票日が迫っている。同日投開票の19町村議会選、3首長選が6日に告示され、知事選と同日投開票の全ての選挙の期日前投票が7日から可能となった。統一地方選とのセット戦術を図る各陣営の動きはさらに活発化しそうだ。8日からは知事選最終盤の「三日攻防」に突入し、ラストスパートをかける。琉球新報社は紙上クロス討論を実施した。知事選に立候補している無所属新人で前衆院議員の下地幹郎氏(61)、無所属新人で前宜野湾市長の佐喜真淳氏(58)=自民、公明推薦、無所属現職の玉城デニー氏(62)=共産、立民、社民、社大、にぬふぁぶし、れいわ推薦=の3氏から相手2候補への質問を募り、文書で回答してもらった。主要公約や政治姿勢などについて意見を交わした。
(文中敬称略、’22知事選取材班)
下地 幹郎氏
佐喜真氏「教育無償化、財源は?」 臨時財政対策債で充当
玉城氏「基地被害拡大するのでは?」 危険は那覇空港以下に
佐喜真 下地氏は教育の無償化を掲げており、その財源は県債発行で賄えるとしているが、県債は建設事業以外の事業へは充当できないという地方財政法の原則がある。この点は総務省に確認したのか、どのように財源を確保するのか伺う。
下地 地方財政法には特例債として、一般財源に充当できる臨時財政対策債が規定されている。また、過疎対策事業債のようにソフト事業に充当できる地方債もある。その上で、財源については、一般財源で賄っていた補助の「裏負担」部分に県債を充当し、それで浮いた一般財源を無償化の財源の一部とする。下地ミキオは10年前から教育無償化を一丁目一番地の政策として位置づけて勉強し尽くしてきた。下地ミキオの主張に呼応して、今でこそ多くの方が教育無償化を主張しているが、あらゆる財源を駆使して、沖縄県から全国初の教育無償化を実現できるのは、大臣を経験し、行政を熟知している下地ミキオだけだ。
玉城 辺野古にオスプレイを移駐させ、馬毛島でも訓練を行い、普天間も米軍が使い続けることを提案している。米軍最優先の日米地位協定の下で、県内でも県外でも米軍が自由に使える飛行場が増え、基地は減らずに被害が拡大するだけではないか。
下地 まず、普天間での米軍の危険な訓練をやめさせることが大事だ。そのために、普天間のすべての訓練を馬毛島に移転する。次に、普天間のオスプレイは、玉城知事が無策のまま政府に押し切られて埋め立てさせた東京ドーム8個分の埋め立て地へ移駐する。米軍の訓練とオスプレイが普天間からなくなり、騒音と危険がゼロになった後、日米地位協定2条4項Bで日本管理とし、民間国際空港として活用。防災の観点から自衛隊と米軍が使用できる余地を残しておく。民間90対米軍10の普天間空港は、民間75対自衛隊25の那覇空港と比べても、騒音と危険は那覇空港以下になり、米軍被害はなくなる。
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佐喜真 淳氏
玉城氏「騒音、事故の移転容認か?」 辺野古住民の生活守る
下地氏「旧統一教会集会の旅費は?」 私費で報告書記載不要
玉城 普天間飛行場の周辺住民が米軍機の昼夜を分かたぬ騒音、事件・事故に苦しめられてきたことを分かっているはずだ。だから建白書に署名したのではないのか。辺野古移設を容認すると言うが、その苦しみを辺野古に移すことを含め容認するのか。
佐喜真 返還合意から26年経過してもなお進展せず、特に玉城県政の4年間は地元との対話も何もなかった。訴訟に明け暮れ、危険性を放置してきたと言わざるを得ない。私は現実的で早期の方策として辺野古移設を容認し、県外飛行場の活用や訓練移転、工期短縮などにより普天間飛行場の返還を2030年までに実現すると明言した。辺野古反対を唱えるばかりで、政府との対立を繰り返し、対話すらままならず、具体的な進展が見えない現県政とは根本的に姿勢が違う。辺野古住民の皆さんの生活も守っていく、政府にも要望すべきことはしっかり要望する。宜野湾市長を経験した私だからこそ実現できる。
下地 佐喜真氏は旧統一教会と関係があることが報道され、旧統一教会関係者のSNS等でも関係の深さを示す写真等が散見できる。台湾で旧統一教会の集会に参加した時、旅費を自らが払ったとおっしゃるが、政治活動として報告するべきではないか。
佐喜真 再三申し上げているとおり、お尋ねの台湾での集会参加は私的なものだ。そのため、旅費や宿泊費などの領収書もとっていない。政治活動としての支出ではなく、私費で行ったものであり、政治資金収支報告書への記載は不要であると認識している。また、当該行事が旧統一教会という認識もなかった。いずれにしても、旧統一教会を巡る報道に関しては、誤解を招くような経緯があったことについて深く反省しており、改めてお詫びするとともに、出陣式でも触れたが、今後旧統一教会との関係は一切持たないことを改めて明言したところだ。
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玉城 デニー氏
下地氏「翁長前知事を否定か?」 批判時は正確な引用を
佐喜真氏「公約実現率、不正確では?」 予算組んで事業を推進
下地 玉城氏は、「『一坪たりとも埋め立てさせない』は翁長知事が言ったことで、私はそのような発言はしていない」とおっしゃる。それは翁長知事を否定することになるが、本気でそう思っているのか。私は、軟弱地盤は絶対に埋め立てさせない。
玉城 私の発言の真意は、相手候補の発言を批判する時は少なくとも発言を正確に引用すべきということだ。討論の際の当然のルールは守ってほしい。私はこの4年間、翁長前知事の遺志を継ぎ、辺野古新基地建設阻止、普天間飛行場の閉鎖・撤去に全力で取り組んできた。県民投票や知事選で示された県民の民意を背に県との話し合いに応じるよう国に求め、国による法律の乱用にはき然と対応してきた。問われているのは、民意も法律も無視してはばからないこの国の政治のあり方だ。この8年間、沖縄の基地問題への理解は全国に広がった。普天間飛行場撤去、辺野古新基地阻止にこれからも全身全霊で取り組む決意だ。
佐喜真 玉城氏の公約達成率に関して、琉球新報によるファクトチェックでも、「推進中の公約287件を『実現率』で表現するのは不正確だ」とする見解が示された。報道機関による評価を真摯に受け止めて訂正し、県民に謝罪をすべきではないか。
玉城 広辞苑をはじめどの辞書を見ても「実現」の意味は「実際にあらわれ出ること」「現実のものとなること」とされ、記事にあった「達成したもの」と解説しているものはない。4年前に掲げた291項目の公約全てに着手し、そのうち287項目は実際に予算を組んで事業を推進している。公約を事業として実現したという意味で、実現率という言葉を使っており、間違いとは考えていない。公約で大事なことは、実際に着手し推進しているということ。子ども医療費の無料化拡大も、中高生のバス・モノレール通学費無料化も、県民の皆さまから大変喜ばれており、そのことが一番大事なことと考えている。