【識者評論】玉城氏再選、その意義は?辺野古反対の県民意思は強固、国の姿勢に再び怒り 江上能義・琉球大学名誉教授


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江上能義(早稲田大・琉球大名誉教授)

 玉城デニー県知事勝利の最大の意義は、辺野古新基地建設反対の県民の意思が今なお強固であることを明示したことにある。

 故翁長雄志氏がオール沖縄を発足させ、2014年に辺野古新基地反対を掲げて県知事に当選して以来、2018年の玉城知事選出、そして今回の再選で3度にわたって、県民が辺野古新基地建設反対の知事を選び続けた意義は大きい。

 県民投票の結果を含めてこうした県民の根強い反対の意思を無視して辺野古埋め立てを強行してきた国のかたくなな姿勢に対し、県民は再び怒りを込めて「NO」を突きつけたと言えよう。岸田政権は沖縄の民意に謙虚な姿勢で向き合う必要がある。

 2月のロシアによるウクライナ侵攻は国際情勢を一変させた。そしてさらに8月のペロシ米下院議長の台湾訪問に反発した中国は台湾包囲の大規模な軍事演習を実施して、日本の排他的経済水域(EEZ)内の波照間島や与那国島周辺に弾道ミサイルを落下させた。

 台湾有事も現実味を帯びてきて、中国に対する日米共同作戦計画のために南西諸島を自衛隊のミサイル基地化する動きが加速している。沖縄を取り巻く状況が一段と険しくなったことに県民は脅威を感じている。「真っ先にまた沖縄が戦場になり、自分たちが犠牲になるのではないか」と。

 こうした県民の懸念や不安が7月の参院選で辺野古反対の伊波洋一氏を、そして「かけがえのない平和の島をつくりたい」と訴え続けた玉城知事を再選させたと言えよう。

 台湾有事への軍事的対処を進める前に、国は沖縄と一致結束して、直近の沖縄の人々の安全への備えをまず最優先して対策を協議すべきではないのか。

 玉城知事には、暗雲を払いのけて平和の島を実現していくための多面的な強い発信力と具体的な行動力が希求される。
 (政治学)