〈122〉前立腺がん 50歳過ぎたらPSA検査


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 国立がん研究センターの2018年の「がん情報サービス」によると、前立腺がんは、男性では最も多い(罹患数第1位)がんです。前立腺は男性のみにあり、膀胱の下に尿道を取り囲むようにある臓器です。罹患数は第1位ですが、5年相対生存率は99.1%と男性のがんの中では最も高いです。これは早期発見できれば予後はとても良いがんであるということです。一方で、前立腺がんで亡くなる方も一定数います。

 沖縄県でも前立腺がんは年々増加しており、特徴としては、診断時に、転移のあるがん(ステージIV)の割合が22.2%で全国の16.3%と比べて5.9%も上回っています(県2019年院内がん登録)。沖縄では前立腺がん検診がまだまだ普及していないことが一因と考えられています。

 前立腺がんには前立腺特異抗原(PSA)という腫瘍マーカーがあり、血液検査で測定できます。早期の場合、ほとんど症状はありません。日本泌尿器科学会の前立腺がん検診ガイドラインでは、50歳以上の方に住民健診でのPSA検査を推奨しています。また、父親、兄弟、子どもに前立腺がんの人がいる場合は、前立腺がんのリスクが2.5~5.6倍になることから、40歳からのPSA検査を推奨しています。

 PSA検査のためにわざわざ泌尿器科を受診する必要はありません。住民健診や人間ドック、かかりつけ医でも検査可能ですのでご相談してみてください。

 PSAは前立腺肥大症や炎症などでも高くなることがあります。検診で異常が指摘された場合は、泌尿器科にて追加の検査を行い、がんであるかどうか詳しく調べます。転移のない早期の前立腺がんの治療は、おもに監視療法、手術、放射線治療などがあります。年齢やステージによって選択肢が変わってきます。手術はロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘術が広く行われるようになっています。転移のある前立腺がんの場合は、ホルモン療法が主な治療になります。前立腺がん早期発見のために、50歳を過ぎたら一度PSA検査を受けてみませんか。

(與那嶺智子、中部徳洲会病院 泌尿器科)