9月10日午後。宜野湾市長選の投開票日を翌日に控えた仲西春雅氏の打ち上げ式は、知事候補の玉城デニー氏が参加したにもかかわらず、集まったのは100人を切っていた。陣営が一抹の不安を覚えたまま、迎えた投開票日。相手候補の松川正則氏は市長選で過去最多となる票を獲得し、仲西氏は1万1206票差をつけられての大敗だった。「まさかここまで開くとは…」。市のホームページを食い入るように見つめていた関係者は言葉を失った。
ことし6月、現職の松川氏の再出馬が決まる一方で、野党の候補者選考は難航していた。現職の市議らが候補に挙がったが「市政野党の議員が少ないことなどを理由に固辞された」(陣営関係者)。最終的に意欲を示していた仲西氏の擁立で決着した時には、選挙まで1カ月半と迫っていた。
同じ顔ぶれだった4年前の前回市長選は約5200票差。関係者の間では「仲西氏は浦添市出身。やはり宜野湾市出身の候補者でないと」と厳しい声もあった。松川氏は市野嵩出身に加え、妻の秀子さんも市内出身。「地縁血縁」の差は歴然だった。だが、超短期決戦で臨んだ前回選挙で2万を超える得票が決め手となった。
選挙戦に向けては緻密なスケジュールが組まれた。市内20カ所の街頭演説に加え、応援弁士は国会議員や県議をそろえた。仲西氏が街頭に立つと、市民の反応も良かった。「4年前とは違う」。支援者らは少しずつ手応えを感じ始めていた。
同日投開票の知事選に出馬した玉城氏とのセット戦術も展開。「デニー氏の人気に乗っかれば、前回よりも差を縮めることはできるはずだ」(陣営関係者)と楽観的な声も飛び交った。
一方、仲西陣営は現職を打破するような目玉政策を打ち出せていなかった。コロナ下での経済的負担軽減を見据えて、給食費や高校卒業までの医療費の無料化を掲げたが、財源面から実行性を担保するには至らなかった。
ふたを開ければ、票差は復帰後で過去2番目に大きく、大敗だった。選挙事務所を後にする関係者からは嘆き節が相次いだ。「10年前は27年間も続く革新市政だったのに。やってられない」「どうすればいいのか」。市政奪還に向けた青写真は描けていない。
(名嘉一心、新垣若菜)
11日投開票の宜野湾市長選の舞台裏や市政への影響を探った。