琉球交響楽団(琉響)の第43回定期演奏会(同楽団主催)が11日、那覇文化芸術劇場なはーと大劇場で開催された。作曲家の萩森英明が沖縄本土復帰50周年に寄せて琉響のために書き下ろした新曲委託作品「黄金(こがね)の森で」を初演、また琉響では初演奏となるブルックナーの「交響曲第4番変ホ長調『ロマンティック』」を披露した。約70人のオーケストラ編成によるダイナミックな演奏で魅了した。指揮は大友直人、コンサートマスターは阿波根由紀、田場尚子。
「黄金の森で」は、萩森が琉球交響楽団に作曲した3作品目。本島北部、山原を訪れた際に感じた印象から、沖縄の自然や季節の移ろいを表情豊かなメロディーで表現する。琉球古典音楽の聞きなじみのある音階やリズムを取り入れ、全4楽章で構成した。自然の壮大さを優美で繊細に表現した。
第1楽章「夜明け」は朝日が昇る情景、第2楽章「鳥たちの歌」はにぎやかな森の一日の始まりを描いた。第3楽章の「歌遊び」は舞や踊り、宴を表現し、第4楽章「夜半」は、星空を想像させるような穏やかな演奏で締めた。観客席から見守っていた萩森は舞台に上がり、観客からの盛大な拍手を受け笑顔を見せた。
最後の演目は、ブルックナー「交響曲第4番変ホ長調『ロマンティック』」で飾った。ブルックナーが手がけた交響曲の始まりの特徴である弦を細かく刻む「弦のトレモロ」から始まり、かすかな幻想的な音色が会場に響いた。トレモロに乗せてホルン独奏やクラリネットの美しい音色が続き、第2楽章は、チェロが主題を奏でバイオリン、ビオラの音色が会場を包んだ。第3楽章は「狩のスケルツォ」と呼ばれ、ホルンが「ブルックナー・リズム」で狩りを表現したユニークな楽章。第4楽章は緊張感のある強弱が幾度と展開され、盛大なメロディーが会場を華やかに包んだ。
(田中芳)