芸能・文化

<書評>『沖縄子ども白書2022』 豊かで学びに満ちた一冊

『沖縄子ども白書2022』編集委員 上間陽子ほか著 かもがわ出版・3080円

 豊かで学びに満ちた一冊である。わくわくしながら読んだ。

 まず、豊富なデータや歴史の検証、多様な視点からの報告に(その執筆者の数にも)驚く。いくつかの論文から沖縄の人々の困難が社会経済的、構造的に生み出されてきたものであり、それは沖縄戦にさかのぼるのだということが明らかになる。

 圧巻は、沖縄にはこの現状を変えようと懸命にはたらく人たちがこんなにも大勢いるという事実だ。それは多彩で広範囲にわたり、それぞれの持ち場で聞き取られた無数のケースからは、子どもたちの声や涙の跡までがリアルに伝わってくる。

 報告の中にくり返し出てくる言葉がいくつかあることに気づいた。「足りていない」と何度も書かれる。戦禍と米軍統治と基地と、何よりこの国の政治に翻弄(ほんろう)されてきた沖縄は、「沖縄振興計画」だけでは「足りていない」だらけなのだ。

 もうひとつは次のようなフレーズだ。「子どもの現実と柔軟に向き合う」「ケアする営みは、子どもの声に耳を傾けることから始まる」「子ども1人ひとりの苦悩や喜びに出会う」「寄り添った声かけを」「ひどいことを言われても、ひたすら関わり続け」…。

 これらの向き合い方から私たちは真摯(しんし)に学ばなければならないだろう。ここで聞き取られている声とは、貧困の中であえいでいたり、暴力が渦巻く場所に取り残されたり、学校から排除されたりしてきた子どもたちの声だ。沖縄で子どもに寄り添う人々は、そうした子どもが問題行動を起こす姿から、大人が選ぶべきは「厳しい罰を与える」や「標準化させる」や「ひたすら学力向上を目指す」ではなく、「耳を傾け」「権利の視点で考える」ことだと探りあて、私たちに教えてくれている。

 何に取り組むべきか、具体的な提言も詳しく書かれている。

 巻頭言には「希望と宣言の書」とある。この本が編まれたこと自体が希望であるのだと読み終えて気づいた。沖縄の人たちが探りあてた希望が、どうか全国の人に届いてほしい。

(坂田和子・全国生活指導研究協議会研究全国委員)


 編集委員 上間陽子(琉球大教授)、川武啓介(やえせ北保育園園長)、北上田源(琉球大准教授)、島村聡(沖縄大教授)、二宮千賀子(一般社団法人Co―Link)、山野良一(沖縄大教授)、横江崇(美ら島法律事務所弁護士)の各氏が務めた。



関連するニュース







  • お知らせ


  • 琉球新報デジタルサービス



  • 会員制サービス






  • 他のサービス