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「来なくていい」玉城陣営に寄せられた苦言…終盤に増やした「辺野古新基地反対」の訴え 司法の判断次第で一層難局も<沖縄県知事選・信任の舞台裏>


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知事選の告示日に、名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブゲート前で、市民らに手を振る玉城デニー氏(右)=8月25日

 「これなら来なくていい」。選挙戦が本格化していたある日。玉城デニー氏陣営に支持者から批判が寄せられた。遊説で、玉城氏が辺野古新基地建設に触れなかったことへの苦言だ。経済再生や若者支援、玉城氏の人間的な魅力を強調する戦略は「新基地建設反対」の優先順位を相対的に低下させた。バランスの難しさが浮き彫りとなったが、中盤以降に辺野古問題の訴えを増やした玉城氏は法廷闘争に加え国際社会への問題提起に打って出る構えだ。

 陣営内には「辺野古への姿勢は、任期中の行動で既に県民に示している」(与党県議)との見方もあったことから、序盤は他の政策への言及が目立った。

 優勢の感触が強まった終盤にかけて、辺野古を取り上げることが増えた。玉城氏は10日夜、最後の演説を終えた後「(遊説に)辺野古反対・普天間の閉鎖返還との気持ちを確かめに来ている人もいる。中盤以降は気持ちを伝えた方がいいと感じた」と語った。

 当選から一夜明けた12日、玉城氏は「国連や国際社会の場で、県民がなぜ訴えているのかということを、幅広く語りたい」と話した。辺野古「容認」を明確にした佐喜真淳氏に、反対を掲げて勝利したことを追い風に、これまで何度建設反対を訴えても「唯一の解決策」と民意に耳を傾けなかった日本政府を飛び越えて、国際社会に基地問題を提起する構えだ。

 玉城氏の再選で、基地建設に向けた県と国の法廷闘争も継続が決まった。再選が決まる前から、県関係部局の関心は玉城氏優勢が伝えられていた県知事選より、同日投開票の県議補選に集まっていた。与野党が拮抗(きっこう)する議会構成の中で与党少数になった場合、訴訟に必要な議決や予算が通らなくなることが懸念されたからだ。県関係者は「二つの選挙を経て議会に提案するのが筋だ。議会が少数与党になっても、知事が替わらない限りは提案するつもりだった」と明かす。

 当選は与党候補の上原快佐氏だった。選挙後の16日、県は抗告訴訟を提起する議案の提出を決める。

 抗告訴訟の提起で、県は設計変更不承認を巡って国を相手に3件の訴訟を進めることになる。県関係者は「県の法廷闘争は最高裁判決が出たら従うのが基本的立場だ。県に不利な判断が(最高裁で)確定したら厳しい」と吐露する。設計変更申請不承認を巡る訴訟で県が敗訴すると、玉城県政が国の軟弱地盤改良工事を承認せざるを得なくなる展開も想定される。

 辺野古を巡る裁判は12件目になる。実体審理に入らないまま県の主張が退けられるケースが多かったが、昨年7月のサンゴ移植の是非を巡る最高裁判断では、県の主張を支持する反対意見も付いた。「実体審理に入れば意見も分かれてくる」(県関係者)と希望をつなぐ。

 (’22知事選取材班)
 (おわり)