防衛局、司法判断前に「不服請求」 辺野古サンゴ移植求める 


この記事を書いた人 Avatar photo 金城 潤

 米軍普天間飛行場移設に伴う辺野古新基地建設でのサンゴの特別採捕(移植)許可申請を巡り、沖縄防衛局は20日、県の移植不許可の取り消しを求めて野村哲郎農相に行政不服審査法に基づく審査請求をした。今回の審査請求は、4月に斉藤鉄夫国土交通相が軟弱地盤の設計変更について県に承認を求める是正指示を出したことに基づく。ただ、国交相の是正指示について、沖縄県は取り消しを求めて8月に提訴したばかり。司法判断前の処分を根拠にした対応について、識者は三権分立や地方自治の精神に抵触する懸念を指摘している。

 県は5日、移植対象のサンゴの生息域周辺に軟弱地盤があり、現行の埋め立て承認では工事が不可能なことから、移植も必要ないとして不許可にした。県が国の軟弱地盤改良工事に伴う設計変更申請を不承認にしたことから「(国は)地盤改良工事を適法に実施する法的地位を得ていない」との立場だ。

 同局は設計変更申請について、4月に斉藤鉄夫国土交通相が県に承認を求める是正指示を出したことなどを挙げ「サンゴ類の移植は必要で、知事の不許可処分は取り消されるべき」と答えた。

 県が移植を不許可にしたのは大浦湾側の「DENH」と呼ばれる地区に群生する小型サンゴ約8万4千群体、大型サンゴ21群体とショウガサンゴ8群体。県はこの場所のサンゴ移植について軟弱地盤の改良工事などを理由に昨年1月と今年2月にも不許可にしていた。今回、同局が対抗措置を取るのは初めて。

 県水産課には防衛局から審査請求した旨の連絡があった。同課は「請求内容の原本を確認してから対応を検討する」と述べるにとどめた。

 辺野古新基地建設を巡り、同局はこれまでも行政不服審査法で県の対抗措置を無効化してきた。行政法学者らからは、本来は国民の権利利益を救済するための制度を乱用した「私人なりすまし」だと批判が相次いだ。
 (塚崎昇平、明真南斗)