「ファッションを楽しみたい」が世界の自然環境、労働問題につながった 高校生が服のシェアを始めた理由<沖縄からSDGs>


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 国連が提唱する持続可能な開発目標(SDGs)は県内でも認知が広がり、市民や企業の取り組みも活発化してきた。2022年度の琉球新報のSDGs特集は沖縄県内を中心に国内、海外の話題を紹介し、県民が気軽に参加できるアクションの情報を提供する。今回はファッションとSDGsがテーマ。衣服の生産過程や廃棄に伴う自然破壊、低賃金で働く労働者の問題などについて調べ、行動を起こした高校生たちの試みなどについて紹介する。


労働問題にも目を向け

 首里高校3年生の有志5人が、校内の生徒同士で服を共有し、貸し借りする仕組み「服のシェアリングサービス」を進めている。取り組んでいるのは、3年生の伊佐真春(まはる)さん、池宮城夏蓮(かれん)さん、比嘉煌(きらり)さん、知花優奈(ゆうな)さん、玉城ひよりさん。低価格で購入できる「ファストファッション」が大量生産・大量廃棄に伴う自然破壊や、発展途上国の不当労働などの問題を引き起こしていることを知り、自分たちにできることを考え、実践している。

 「服のシェアリングサービス」はまず、校内に設置した箱「古着回収ボックス」に、生徒1人当たり3着の服(古着)を入れていく。一定の服が集まったら、譲渡会と称する交換し合う場を設けて、1人当たり3着を借りることができる仕組みだ。
 

校内に設置した「古着回収ボックス」を手にする(左から)池宮城夏蓮さん、伊佐真春さん、知花優奈さん、比嘉煌さん=16日、那覇市の首里高校

 1年生の頃に伊佐さんが「お金をかけずにファッションを楽しめるようにしたい」との思いで、提案したことがきっかけ。1年生の頃は同じ学級だった友人の池宮城さん、比嘉さん、知花さん、玉城さんも賛同した。伊佐さんらは2年生の頃、校長にも直筆の企画書を提出し直談判して説得し、同サービスを実施することについて許可を得た。

 新型コロナウイルス禍の影響もあり、校内に「古着回収ボックス」を設置して本格的に服を集め始めたのは、3年生になってから。手作りのポスターや校内放送などを活用し、服集めに協力を呼び掛けたが、当初は思うように集まらなかったという。少しずつ集まり、16日現在、10人から計30着の古着が集まっている。あと20人分(60着)を集めて譲渡会を開くことを計画しており、目標達成に向け協力を呼び掛けている。

 最初はファッションを楽しみたい思いから始まった試み。その後に、自然環境や労働問題が関連することを学び、SDGsにもつながる問題だと意識するようになった。

服のシェアリングサービスについて発表する首里高校の生徒たち=3月12日、琉球新報ホール

 今年3月には、SDGsを推進する企業や団体が参加する「OKINAWA SDGsプロジェクト」の年次フォーラムでも取り組みについて報告した。

 伊佐さん、池宮城さん、比嘉さん、知花さんは16日、取材に「(洋服と自然環境、労働問題の関係について)世界規模の問題があると知ったからには、何か私たちに起こせる行動を起こしたいと思った」「(服のシェアリングサービスの)アプリも作ってみたい」などと思いを語った。


毎日1300トンが埋め立て・焼却

 衣服は生産過程で生じるエネルギーの使用量や廃棄に伴う環境への負担が大きいとされる。環境省によると、国民1人当たりが1年間に購入する服は平均で約18枚、手放す服は約12枚。1年間に1回も着ていない服が1人当たりで25枚もあるという。
 

 同省は2020年12月~21年3月、日本で消費される衣服と環境負荷に関する調査を多様な視点から実施した。

 同調査で、服を手放す手段としては「可燃ごみ・不燃ごみとして廃棄」が68%を占めた。「古着として販売」11%、「資源回収」7%、「譲渡寄付」3%などにとどまった。

 服がごみとして出された場合、再資源化されるのは約5%にとどまり、約95%はそのまま焼却・埋め立て処分となり、年間で約48万トンにも上る。1日当たりで埋め立て・焼却される衣服の総量(平均)は、1300トンで、大型トラック130台分に相当する衣服が毎日、焼却・埋め立て処分となっている。

 同省はウェブサイトで「毎日廃棄される大量の衣服を処理するために環境負荷が生じており、現状を変えてゆく必要がある」と呼びかける。その上で(1)服を長く着る(2)再利用でファッションを楽しむ(3)先のことを考えて着る―などの視点が必要であることを指摘し、「サステナブルファッション」(これからのファッションを持続可能に)と提案している。


 SDGs(持続可能な開発目標)は2015年、国連サミットで採択された国際社会の共通目標。環境問題や貧困などの人権問題を解決しながら経済も発展させて持続可能な未来を創ろうと、世界中で取り組みが進められている。

取材・古堅一樹