【東京】安倍晋三元首相の国葬が27日、東京都千代田区の日本武道館で行われた。米軍普天間飛行場の沖縄県名護市辺野古への移設を強行するなど安倍氏の沖縄政策の進め方については、県内での評価が賛否に割れた。沖縄から献花に訪れる人がいた一方で、抗議デモに参加する県出身者の姿もあった。
国葬の会場前に設置された一般の弔問客向けの献花台には、早朝から長蛇の列ができた。
弔問は、当初の開始時間を30分前倒しして開始。参列者の列の中に、沖縄市の男性の姿もあった。元警察官で警備担当の経験もあるという男性は、安倍氏が選挙中の銃撃事件で命を落とした点に言及し「警察OBとして、なぜ安倍さんを守れなかったのかという悔いが残っている。しっかりと弔わなければならない」と話した。
国葬の前後には、複数箇所で反対集会が開かれた。午前11時から千代田区内の公園で始まった集会では、与那国町出身で都内に暮らす「沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック」の男性が、つえを片手に参加し「(安倍政権は)沖縄に対しても県民の民意を無視し、振興策を使って分断を図ってきた。国葬そのものの問題もあるが、ウチナーンチュの怒りもある」と語気を強めた。
正午からは約600人が国葬会場の近くを行進し「税金を勝手に使うな」などと声を上げた。
米軍基地建設に反対する市民をテロリストに例えるなどした、東京MXの番組「ニュース女子」を巡る問題で抗議を続けてきた「沖縄への偏見をあおる放送をゆるさない市民有志」は手書きの横断幕に「デマとヘイトの挙げ句の果てに『国葬』なんてあり得ない」と記した。市民有志の一員として、横断幕を持ちながらデモ行進に参加した女性(59)は「沖縄に関してもデマとヘイトをもり立ててきた」と安倍氏の政治手法を断じた。
辺野古新基地建設に反対する市民団体「あつまれ辺野古@関東」の福田唯一代表(73)は「沖縄に対して高圧的な発言や行動をしてきた安倍氏を国葬で持ち上げるのは、あり得ない」と強調した。
午後1時ごろには、会場近くの交差点で旭日旗と日の丸を掲げる団体が「国葬反対」を訴えるデモ隊と交錯し、「反日集団は帰れ」と罵声を浴びせる場面も。怒号の応酬はしばらく続いた。
(安里洋輔、明真南斗)