識者談話 波平恒男氏(琉球大名誉教授) 業績、国葬に値するか


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波平恒男氏

 国民の反対の声が強まる中、安倍晋三元首相の国葬が実施された。岸田文雄首相は、国葬を決めた理由としてさまざまなことを挙げていたが、そこで挙げられた安倍政権の業績は大きな負の側面も持っていた。

 国葬反対の世論が高まった理由は、安倍政権の業績が国葬に値するかどうかという点がある。歴史的に評価が定まっていない上、強権的な安倍政治に反対する声が生前から強かったことがある。

 もう一つは、岸田首相が国会を無視して閣議決定のみで国葬を決めたこともある。銃撃事件をきっかけに旧統一教会と自民党政治家の癒着が次々と明るみに出てきたという事情もあった。

 国葬反対の意見は沖縄では全国以上に大きかったのではないか。友人代表として弔辞をささげた安倍政権で内閣官房長官兼沖縄基地負担軽減担当相を務めた菅義偉氏が象徴的だが、辺野古新基地建設に反対する民意を徹底的に無視し、県との対話を拒絶し続けた政権こそ安倍政権だった。

 選挙制度が民主主義の根幹であることは言うまでもない。だが、その選挙の最中に凶弾に倒れたからと言って、安倍氏を民主主義の体現者であったかの如く見なしてはならない。まったく逆で、安倍一強の時代にこそ、日本の民主主義の形骸化だけでなく、自民党自体の劣化さえ進んだのではなかったかと思う。 (政治学)