【識者談話】記録残すことも「政治責任」 辺野古V字案合意の経緯、名護市公文書なし 三木由紀子氏(情報公開クリアリングハウス理事長) 


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三木由希子氏

 米軍普天間飛行場の移設問題は現在も継続している。沖縄だけの問題ではない。県と国との対立があったり、米国との関係もあったりもする極めて高度な政治性がある。当時、交渉に関わったごく一部の人たちだけが知っていればいい問題ではない。

 首長などは決断することだけが政治責任ではない。なぜそういう決断に至ったか、経緯を記録にとどめることも含めて政治責任だ。記録を残すのは将来のためだけではない。すぐに公開することはできなくても、今、責任ある政治判断をしているとの裏付けになる。

 物事を決める時は全ての人が100%納得できる結果、結論はない。記録がないと、そこに至った経緯が分からず、結果の「○」「×」の議論にしかならない。学習する材料を失うことにもなる。

 記録がない方が不利になる。一方に記録が残っていると、記録が残っている側の情報を基に検証、評価される可能性がある。首長らの正当な評価もできなくなる。例えば、自治体側の記録がないため、検証ができず国に全て責任転嫁してしまうような議論に終始してしまうかもしれない。


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