島だからこそ、循環型のモデルに 世界救う発信を<国連総会科学サミット 沖縄発(下)>


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 国連総会に合わせて9月20日に開催された第8回科学サミットの詳報3回目は、登壇4氏によるディスカッションの様子を伝える。司会は琉球新報の島洋子編集局長。当日を録画した動画はhttps://youtu.be/RW0NwvTG2rgコードから。(敬称略)

オンラインで開かれた国連総会科学サミットで議論を交わす県内登壇者ら=9月20日

―島の持続可能性へエネルギーはどうあるべきか。

 瀬名波出(琉球大教授) エネルギーは1次産業からサービス業まで全ての活動の源。エネルギーなしに社会は成り立たない。外に頼らず地産地消すること、誰かが独り占めせず分け合うことがSDGsの基盤になる。

―沖縄には、資源の限られた島の中で分け合ってきた先人の経験がある。

 花城良廣(沖縄美ら島財団理事長) 16~17世紀に編集された歌謡集「おもろさうし」には24の植物が記されている。先人たちは小さな島で苦労しながら島の植物資源を衣食住に活用し、その知恵を伝えた。先人から預かった知恵や、植物そのものを次世代に引き継ぐのが非常に重要で、自然史博物館の理念に重なる。

―自然史博物館について詳しく教えてほしい。

 西田睦(琉球大学長) 食べ物から医薬品まで人間は自然に依存して生存してきたが、私たちは自然や人間自身についてもほとんど知らない。博物館には標本の収集・保管や研究、教育、人材育成といった役割があり、欧米の自然史博物館は近代社会発展の礎となった。生物多様性が高く、生物が生きている場所にアクセスしやすい沖縄で、国内、アジア諸国ともつながり、ビッグデータや拡張現実といった技術も生かした新しい考え方の自然史博物館があるといい。

―女性という足元を知らないことで何が起きるか。

 オリガ・エリセーバ(OIST客員研究員) 女性は常に「合わせている」。月経に合わせ、妊娠中は胎児に、出産後は赤ちゃんに、年をとると更年期にも合わせる。正しい情報が届かないことも多く、つらくても無理して頑張ることが文化や教育の中に刻み込まれている。職場では男性同様の働きが求められるが、できない。女性自身、自分に何が起きているかを知らず、周囲にも説明できず、本人がつらいままで終わってしまうことも多い。

―SDGs(持続可能な開発目標)達成を不安視する声もある。何が必要か。

 オリガ 個人の行動も全てがSDGsにつながっている。あふれる情報から正しいものを判別し、何を選ぶのか、自分の行動がどう社会につながるか、論理的に考える力を育てる教育がとても大切だ。

 西田 SDGsのゴールはたくさんあり、全か無かではない。達成できたものを喜び、不十分なものは次にどうするかを考えるのが大事だ。SDGsの意義は世界中が同じ方向で取り組んでいること。大きく前進するし勇気づけられる。

―沖縄の可能性は。

 瀬名波 小さい島だからこそ循環型のモデルを作ることができ、世界の島々にも展開できる。世界を救う発信が沖縄からできると信じて挑戦している。

 花城 周囲4キロしかない鳩間島の出身だが、衣食住に困らない資源があり、活用する知恵がある。アジアに近い地理的条件、住んでいる人、文化も資源。小さな島だからこそ、知恵を持って資源を活用していくことが重要だ。