気になる県民の機運醸成、江州幸治氏(沖大・沖国大特別研究員)〈さぁ始まる!ウチナーンチュ大会〉上


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1万5千人余の県系人、県民らが参加し、会場が一体となった第6回世界のウチナーンチュ大会閉会式、グランドフィナーレ=2016年10月30日、那覇市の沖縄セルラースタジアム那覇

 あと2週間で6年ぶりの「世界のウチナーンチュ大会」が始まる。3年間世界中で続いたコロナ感染の中で、海外や県外からどれくらいの人々が来るであろうか? オンライン同時開催はどこまで機能するか? 大会に向け人々の気運の興隆がなぜ感じられない? 暫(しば)し不安が拭えない。

 ある朝、そんなモヤモヤを払うようなメールが届いた。アルゼンチンの友人エルネスト宮城(ミヤシロ)からである。琉球大学のシンポジウムでパネリストとして参加するというのである! うれしい限りである。エルネストは沖縄県の県費留学生、研修員制度により琉球大学等で学び、今は、建築家として活躍し、ブエノスアイレス大学でも教鞭(きょうべん)を執っている。アルゼンチン沖縄県人会の理事や文化部長など要職を務めており、親戚には歌手の大城クラウディアさんがいる。

 俄然(がぜん)目が覚め、朝ドラ「ちむどんどん」を見た。そこでヒロイン暢子に関係の人々が再登場するのだが、これがブラジルやハワイに移住しており、改めて県民の生活に海外が身近であると認識した。考えるとハワイには妻の親戚が多い。私も海外の人々に仕事や留学で世話になった。

 ところで、この半月前に迫った時点で、ウチナーンチュ大会に向けた県民機運の醸成を今一つ私が感じられないと思ったのはなぜか、改めて要因を考えてみた。

 まず、長年世界中を苦しめたコロナ禍がある。日本、沖縄は言うに及ばず、世界中が未曽有の危機に陥った。最近になり欧米では沈静化に向かい、日本もやっと感染縮小の兆しが見えてきたが、アジア、アフリカや中南米の諸国は今だ大きな痛手を負っている。県によれば10月3日現在で世界19カ国1558人が参加予定だが、前第6回大会参加7350人のような参加は厳しい。コロナの影響による1年延期はやむを得なかったが、参加を待ち望む御高齢者に時間はない。

江洲 幸治

 次に、2月に起きたロシアのウクライナ侵攻は、第2次世界大戦後の平和の概念や安全保障体制の在り方を根底から覆したものといえよう。これまでも、ベトナムやアフガニスタン等世界各地での争いが数多く起きた。しかし、平和を守るべき国際連合安全保障理事会の常任理事国のロシアが直接起こしたウクライナの侵攻は世界を驚愕(きょうがく)させるものであった。2000年サミットで沖縄にも来て笑顔で少年と柔道をしたプーチンが、今や核の脅しさえ見せている。ロシアの侵略に苦しむウクライナに世界中の人々とマスコミの注目が続くのは当然であろう。

 国内に目を転じれば、岸田政権下の参院選挙、その最中の安倍元首相の狙撃事件、参院選の自民党の圧勝、国葬と世論の反対、さらには選挙後明らかになった旧統一教会関連の問題がある。

 県内では、年当初からの各市町村の首長選挙や参院選沖縄選挙区選挙、そして先の知事選、市町村議員選挙とあり、今月には那覇市長選が控える。一連の選挙に県民やマスコミの関心が集まった上、感染拡大が観光経済に影響を与え、石油・天然ガスの高騰や円安は生活を直撃した。

 これらの要因等により、県民やマスコミの大会への関心が後手に回ったことは否めない。
 (沖縄大学特別研究員、沖縄国際大学特別研究員)

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 えす・ゆきはる 1956年、那覇市生まれ。早稲田大学大学院博士後期課程修了。沖縄県庁で商業貿易、国際交流等主に国際関係に従事。台湾師範大学、米国ペンシルバニア大学に留学。米国統治下の沖縄と民主主義形成での立法院の役割等、諸論文あり。