prime

流行の半歩先を提案 顧客と接する現場担当者に権限、柔軟な展開を可能に<暮らしを豊かに・家具の「大川」>5


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
家具の配置や見せ方を工夫する田中瑞希さん=沖縄市与儀のmaxplus泡瀬店

 機能的なキッチン用品や生活を彩るホームフレグランス、デザイン性の高い大型家具。maxplus(マックスプラス)泡瀬店には、住まいが明るく豊かになるような商品が並ぶ。

 中でも特に人気があるのが、武骨でヴィンテージ感のあるイメージのインダストリアル(工業的な)スタイルの空間を提案する売り場。この売り場を担当しているのが、入社5年目、31歳の田中瑞希さんだ。「同じ商品でもどこに置くのか、何と組み合わせるのかでお客さんの反応は違ってくる。売り上げに対する責任はあるが、自分で判断できるのは楽しい」と話す。客の動き、SNSの情報などアンテナを張り、流行の半歩先を提案している。大川では、田中さんに限らず直接顧客と接する現場の担当者に権限を持たせることで、柔軟な展開を可能としている。

 「沖縄にまだない店を」というテーマで、ライフスタイルから提案する新業態「maxplus」を立ち上げたのは2006年。家具とインテリアを扱う既存店は客数が減っていた。家具は頻繁に買い替えるものではないため、離島県の沖縄で家具だけを扱っていては先細りになることは目に見えていた。

 当時、ナショナルチェーンの雑貨店やライフスタイルショップはまだ沖縄に進出しておらず、県外にはたくさんあるかわいい雑貨が沖縄では手に入らないという状況だった。maxplusはその需要をつかみ、客数は倍に増えた。特に若い女性の来店が増えるなど客層も広がった。

 以降、売り上げは伸びていったが、08年、リーマンショックで一気に消費が止まった。同年はショッピングモール「リビングデザインスクエア泡瀬」がオープン。新たに事業を展開し飛躍するはずだったが、計画は大きく崩れた。大型設備投資と同時に世界的な不況が襲うという最大のピンチだったが、政府のセーフティーネットなど融資制度を最大限に活用してなんとか経営を続けた。外間幸一社長は「人件費の削減、組織の構造改革などあらゆる仕組みを合理化した」と振り返る。

 一番大きな改革は、現場への権限委譲だった。それまではトップダウンで物事を決めていたが、売り場の担当者が予算権限を持ち、仕入れや売り方を判断するようになった。外間いち子専務は「売り場が大きくなったのに、ベテランがおらず現場で判断しないと回らないという追い込まれた状況でもあった」と振り返る。

 「リーマンショックで売り上げが落ち込んだ時も客数は減っていなかった。お客様は私たちに期待している。それに応えることを追究していけばいい」。客に一番近い担当者だから分かることを地道に実行し、支持を集めていった。

(玉城江梨子)