沖縄愛楽園自治会に全国初の女性会長 ハンセン病啓発「地道に取り組み」


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沖縄愛楽園の新自治会長に就任した小底京子さん=5日、名護市済井出の沖縄愛楽園

 【名護】国立ハンセン病療養所「沖縄愛楽園」自治会の新会長に1日、小底京子さん(71)が就任した。全国に13ある国立療養所の入所者でつくる自治会で、女性の会長は初。愛楽園では、長年会長を務めた金城雅春さんが2021年に死去し、後任の米蔵豊正さんも今年1月に亡くなった後、会長不在が続いていた。小底さんは「将来構想など課題が山積している状況で、会長不在は是が非でも避けたかった」との思いで就任を決意した。

 小底さんが住み慣れた故郷を離れ、愛楽園に入ったのは17歳の頃。「一番楽しい時期に発症した。青春の夢は向こうに置いてきた」と振り返る。生活が一変。「もやもやした気持ちで人目を避けて泣くこともいっぱいあった」という。

 そうした中で、出合ったのが琉球琴だ。琴の音色に魅了された。「自分自身が励まされた。少しずつ心にも潤いが持てるようになった」と語る。琴にのめり込んでいき、稽古場に入った。その際は偏見・差別を恐れ、近場ではなく本島中部の稽古場にバスで通った。

 琴の師匠は病気を打ち明けても受け入れ、熱心に指導してくれたという。「とてもすてきな先生。私を育ててくれた」と感謝の思いを語る。30代で新人賞、40代で最高賞を受賞。その後、師範となり現在も園外で琴の活動を続けている。門下生もいるという。

 夫の故・小底秀雄さんも自治会長を務め、愛楽園の存続やハンセン病の啓発に関わってきた。小底さんは夫をそばで支えた。差別の解消や国の隔離政策の責任を問う裁判などに力を尽くした金城元会長の時代は、7年間事務部長を務めた。

 全国に13ある国立ハンセン病療養所では、入所者の高齢化が進み、会長のなり手不足が課題となっている。活動を休止している自治体も複数ある。愛楽園も2017年は160人(平均年齢83.50歳)いた入所者が、現在は100人(同85.70歳)まで減少した。

 今回の新会長選では選挙当日になっても、立候補者が現れなかった。小底さんは自治会が存続しなければ、「100人の入所者、一人一人の声が反映されないことになる」と考えた。悩んだ末に選挙当日の締め切り直前で意を決し、立候補した。

 なり手不足について、小底さんは「自治会長は、県外での会議、厚生労働省への交渉などで多忙を極めるため、健康への不安が大きい」と推察する。自身も「重責を果たすことができるか不安もある」と葛藤を抱えているという。

 ハンセン病への差別や偏見はいまだに根強い。小底さんは「誰しも何かしらの差別的な一面を秘めていると思う。他人にとらわれない自身に向き合えることが大切だ」と語る。「今後も地道に啓発活動に取り組んでいきたい」と力を込める。交流会館への来場も呼び掛けた。
 (長嶺晃太朗)