平和希求する「沖縄の心」 江洲幸治氏(沖大・沖国大特別研究員)〈さぁ始まる!ウチナーンチュ大会〉下


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沖縄全戦没者追悼式で、平和宣言を読み上げる沖縄県の翁長雄志前知事=2018年6月23日、沖縄県糸満市の平和祈念公園

 本年2月に勃発(ぼっぱつ)したロシアのウクライナ侵攻後、安全保障理事会を中心とする国際連合や先進国首脳会議参加国、EUやNATO加盟国などが停戦を働きかけているが、いまだに状況は厳しい。

 このような中で沖縄の国際交流を考えてみる時、2018年沖縄全戦没者追悼式での翁長雄志前知事の「平和宣言」を思い出さずにはいられない。翁長前知事は「かつて沖縄は『万国津梁』の精神の下、アジアの国々との交易や交流を通し、平和的共存共栄の時代を歩んできた歴史がある。私たち沖縄県民は、アジア地域の発展と平和の実現に向け、沖縄戦の悲惨な実相や教訓を正しく次世代に伝えていくことで、一層国際社会に貢献する役割を果たしていかなければならない。恒久平和を希求する『沖縄のこころ』を世界に伝え、未来を担う子や孫が心穏やかに笑顔で暮らせる『平和で誇りある豊かな沖縄』を築くため、全力で取り組んでいく」と宣言した。亡くなる直前の魂の「平和宣言」は県民の心を強く打った。ここには沖縄の国際交流の意義が見事に集約している。コロナ禍とロシアのウクライナ侵攻という逆境下の今こそ、この翁長前知事の思いを、ぜひ第7回世界のウチナーンチュ大会にも活(い)かし、県内外のウチナーンチュたちと県民の平和の集いとしてほしい。

 ところで、私は、昨年より「嘉手納町の旧軍飛行場用地問題調査専門委員会」委員として本年まで報告書の作成に関係したが、沖縄戦直前に旧日本軍の飛行場が県内に16カ所あると知り非常に驚いた。大学やメディアの方々とは、当時の状況が今の沖縄と似ていると話題になった。

 先のペロシ米下院議長の台湾訪問をきっかけに、中国の台湾侵攻が現実味を帯び、北朝鮮もミサイルの威嚇発射を続ける中、沖縄が再び戦争に巻き込まれる恐れが現実化しつつある。

 沖縄、日本国内だけではこの状況の打開は容易ではない。世界から沖縄にオンライン参加を含めて大会に賛同する人々と「沖縄のこころ」、「平和への希求」を共有し、発信することは大きな意義がある。

 むしろこの逆境を捉え、沖縄の国際交流を再確認するとともに、逆にウチナーンチュ大会において県民が内外の人々と、翁長前知事の「平和宣言」を改めて発信する絶好の機会とすべきではなかろうか。

 私は、ウチナーンチュを「沖縄の地域や社会と関わり(関わりたい)、そのことが自身の意識構造の基盤の一部となり、自らがウチナーンチュであるとの意識に立つ人」と考えている。県外、海外の沖縄県系子弟や県在住の県外出身者およびその子弟もウチナーンチュの意識があれば当然立派なウチナーンチュである。さらに沖縄の人々や自然、文化などに興味を持ち沖縄を好きになれば、ウチナーンチュの資格ありだ。大会は一部の人たちのものではない。沖縄が好きで関心があれば、躊躇(ちゅうちょ)せず皆で海外からの来沖者に「メンソーレ! ようこそウチナーへ!」と声をかけ交流し、大会に参加しよう!

 イチャリバーチョーデー(会えば皆兄弟)に理屈や語学はいらない。今から、多くのウチナーンチュと帰沖されるウチナーンチュとの平和の交流にチムドンドンする。ちなみにNHKの海外放送で多くの方々が「ちむどんどん」を見て元気が出たと聞く。離れても心は同じなのである。
 (沖縄大学・沖縄国際大学特別研究員、早稲田大学院博士後期課程修了)