琉球絣の端切れを再生「紙と絣のブックカバー」 中村印刷が審査員特別賞 地域と連携し商品開発 産業まつり


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 第46回沖縄の産業まつり(同実行委員会主催)2日目は22日、晴天の下、朝早くから多くの家族連れでにぎわった。真夏のような暑さもあり、冷たい飲料を提供するブースには長い列ができた。今年の産業まつりはSDGs(持続可能な開発目標)を意識した商品や技術の紹介が多いことが特徴だ。特産品コンテストで審査員特別賞を受賞した中村印刷は琉球絣の端切れを使い商品を開発した。渡嘉敷村のホテルは廃棄されるマグロの骨からだしをとったそばを出品し、好評を得た。産業まつりは23日まで。午前10時から屋内展は午後7時まで、屋外展は午後8時まで開かれる。

開発した「紙と絣のブックカバー」を手に持つ中村印刷の知念由紀社長=21日、那覇市の奥武山公園

 見た目はシンプルな革のようなのに素材は紙、めくると裏は琉球絣(りゅうきゅうかすり)。驚きが詰まった「紙と絣のブックカバー」を製作したのが中村印刷(南風原町、知念由紀社長)だ。捨てられてしまう絣の端切れを活用して付加価値の高い商品を作り出し、商工会特産品コンテストで審査員特別賞を受賞した。

 知念社長は「電子書籍で本を読む人も増えているが、紙の本の手触りが好きな人も多い。そんな人たちに使ってもらえたらうれしい」と話す。

 南風原町商工会の地域ブランド構築・展開プロジェクトで、琉球絣事業協同組合の「絣の端切れで商品開発したい」という課題を知ったことから、共同プロジェクトが始まった。

 中村印刷は以前から、汚れや水に強いコルドバ紙でブックカバーを製作していた。紙に布を貼る製本技術も持っている。これらを掛け合わせ、紙に布を貼ってブックカバーを作るという方法を思いついた。

 表に絣を貼った商品はすでに存在するため、今回のブックカバーは裏に絣を貼った。難しかったのは、絣の生地の厚さがそれぞれ異なるということだ。紙に絣を貼る時のボンドの量が多すぎると生地に染みができる。量の調整と乾かす時間を試行錯誤して追究した。

 できあがったブックカバーは、そのままでは捨てられてしまう絣の端切れを再利用しただけでなく、「絣は好きだが、着物や帯は高価で手が出せない」というニーズも満たす一品に仕上がった。

 完成度の高さが評価され、生地の端切れに悩むアパレルブランドから、コラボ商品製作の提案もあるという。

 コロナ禍でイベントがなくなり、印刷物の受注が減った。自治体のお知らせも紙からLINEに移行するなど、ペーパーレスが進んだ。「印刷業界はコロナで一気に衰退のスピードが速まった。コロナ前にはもう戻らない」と感じた。紙の印刷が中心であることは変わらないが、別の事業も立ち上げておく必要があると考え、商工会のプロジェクトに参加した。

 「コロナ前は忙しくて、地域の横のつながりを考えたこともなかった」と話す知念社長。コロナ禍を機に地域を見つめたことで、新たな展開が始まった。

(玉城江梨子)