地域に支えられ半世紀 ハワイ県系3世・比嘉ジェイソンさん<世界のウチナーンチュ大会>


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「夢はラスベガス!」ジッピーズ1号店の前に立つFCH最高経営責任者の比嘉ジェイソンさん=13日、ハワイ州ホノルル(提供)

 ハワイで56年間、愛されているファミリーレストランがある。アジア中心の多国籍料理を振る舞う「Zippy’s(ジッピーズ)」だ。1966年に県系2世の比嘉フランシスさんとチャールズさん兄弟が創業し、ハワイで有数の大企業に成長。現在はフランシスさんの息子・比嘉ジェイソンさん(59)が親会社FCHのCEO(最高経営責任者)を務める。

 初代の比嘉兄弟は30年と35年生まれ。親は大規模農場(プランテーション)で働き、10代から靴磨きや父の肉屋を手伝うなどして家計を支えた。66年、2人は友人の力を借りて資金を調達し、ホノルルに24時間営業のジッピーズ1号店を開いた。財政にゆとりはなく、レストランが利益を生むまで支払期限を延ばすなど、取引先に支えられた。

 「ビジネスは支えてくれる人がいるからこそ、成り立つ」とジェイソンさん。先代からはコミュニティーを大事にし、財政的に賢い選択でなくても正しいと思う選択をするように教わった。創業時から地元農家の食材を仕入れるほか、毎年9月の「オキナワンフェスティバル」(ハワイ沖縄連合会主催)の前にはジッピーズで三枚肉の煮付けを期間限定で提供するなど、地元コミュニティーへの還元を忘れない。

 県人会を支える重要なスポンサーとなったジッピーズだが、新型コロナウイルス禍でレストラン業が立ちゆかなくなった時、県系人らがテイクアウトを積極的に利用し、事業を支えた。

ジッピーズ創始者の比嘉フランシスさん(左)とチャールズさん(提供)
三枚肉の煮付けをアレンジした「醤油ポーク」。ハワイ沖縄連合会主催のオキナワン・フェスティバル前になると、ジッピーズで提供される

 

 62人で始めた店はコロナ禍で2店舗、従業員800人を減らしたものの、現在ハワイ州に22店舗、従業員1600人を抱えるビジネスへと成長した。ジェイソンさんは「父や叔父から受け継いだ遺産を未来に残したい」と話し、さらなる事業拡大に向けラスベガスへの進出を目指している
 (比嘉璃子)

 

<プロフィル>

 ひが・じぇいそん 1963年10月9日、米国ハワイ州出身。1990~95年、同州ホノルルで弁護士として勤務。2003年から現在まで「Zippy’s(ジッピーズ)」の親会社FCHエンタープライズで最高経営責任者を務める。