なは女性センター(那覇市銘苅)の開館26周年を記念した特別講演がこのほど沖縄大学で開催された。琉球大学教育学研究科の上間陽子教授が「沖縄、若年妊娠・出産を考える―調査と支援の現場から」と題して話し、約100人が耳を傾けた。
上間さんは沖縄の風俗業界で働く若者を対象にした2012年からの調査と、17年から始めた若年出産した女性を対象にした調査の経緯や結果について紹介した。
二つの調査の対象者は家族関係が厳しかったり初職が風俗業界が多かったりと共通項もあるが、違いとしては(1)不登校開始年齢(2)身近なネットワークの性質(3)風俗業界での働き方(4)幼少期からの性虐待の事例―を挙げた。
若年出産した女性の調査では、不登校開始年齢が小学生からと早いことや、学校や地元をベースにしたリアルな関係が縮小し、ネットワークの性質にダイレクトに表れることなどを説明した。
上間さんがこれまでに調査した若年出産の女性は77人。その内実について「彼女たちは一枚岩ではなく多様性がある」と説明する。特に若年出産した女性と実の母親との関係に左右されることが分かったという。
赤ちゃんが生まれて実の母親との関係がよくなり地元の友達などがいる女性は「ハッピー度が高く、若年出産勝ち組」で、赤ちゃんとの愛着関係もしっかりと形成できているパターンがあるという。
対局にあるのは母親が攻撃的だったり、宗教に入っていたり、男性に依存していたりする場合。上間さんはそうした厳しい状況でも子どもを産む女性の心情について「関係が厳しい子ほどもう一度お母さんに抱きしめられたくて子どもを産むが、切実に思う子ほど現実は厳しい」と分析した。
いくつかの事例を紹介した上で「支援する側が女性たちへの加害者にならないためにも、トラウマケアについての知識が必要だ」と指摘。不特定多数との交際や自傷行為などの背景には、幼少期の性虐待や摂食障害、レイプ、DV、ネグレクトなど別の出来事があることを理解して接する重要性を説明した。
上間さんは2021年10月に本島中部に開設した若年出産のシングルマザーを保護するシェルター「おにわ」の共同代表でもある。おにわは寄付と助成金で運営し、助産師らが常駐する。上間さんは「これは本来は公の仕事。子どもを持った女性の一番弱い時を行政が支えられなくてどうするのか」と行政が支援に乗り出すべきだと訴えた。
(嶋岡すみれ)