【沖縄】教職の傍ら、沖縄市女性連合会の前身の市婦人連合会会長を務めるなど、教育、女性問題、福祉など多分野で活躍してきた故仲宗根澄さん(1907~2011年)の人生を描く「人生は、はーえーごんごん 仲宗根澄〈明治・大正・昭和・平成〉百年の道程」がこのほど出版された。沖縄市で福祉分野の「マドンナ」(「老人クラブのマドンナ」説も)と呼ばれ、歌を歌えば「天使の歌声」と称され、親しまれた仲宗根さん。沖縄市女性史サークルなどが約20年かけてまとめた。メンバーらは「やっと出版でき、安堵(あんど)の思いに満たされている。たくさんの助けを頂き、本にできたので、ぜひ多くの方に手に取ってほしい」と語った。
出版は、同サークルの前身である市女性研究会の設立がきっかけ。市の発展に貢献した女性の歴史を残そうと始まった。候補者には複数の女性の名が挙がったが、最終的に多分野で功績があった仲宗根澄さんに白羽の矢が立った。約20人の会員らが2002年ごろから聞き取りを開始した。
「凜としたたたずまいがすてきな澄先生を多くの人に紹介できたらと思っていたが、まさかこんなに時間がかかるとは」。出版に関わった喜屋武すまこさんは笑う。聞き取りは断続的に行われた一方で、費用面の課題などからなかなか書籍化が進まなかったという。
編著を担当した大城道子さんも「澄先生の話を通して、女性の歴史やその時の思いなども学ぶことができる内容だった。毎年、今年こそ形にしたいという執念がやっと実った」と話す。
仲宗根さんの遠縁に当たり、聞き取りも行った和宇慶光子さんが出版費用のめどを付け、出版が決まった。「澄さんは憧れのおばさんだった。歩まれた道は今振り返ってもいろんな人の励みになるだろう」と語る。
出版までの20年の間には、数々の「不思議な巡り合わせ」も重なった。資料を集めている段階で、「おばあちゃんの本ができる夢を見た」という仲宗根さんのひ孫のミラー知念ありささんとの出会いもあり、本の中にはそのエピソードもある。出版前には、27歳の若さで急逝した夫の信善さんに宛てた仲宗根さんの短歌も見つかった。
聞き取り調査した小島久子さんは「澄先生とは福祉関係でご一緒したことがあるが、本当にエピソードが次から次へと出てくる楽しい方だ。人生を楽しむための参考本にもなるだろう」と強調した。
書籍は県内書店で発売中。値段は税込みで1980円。
(新垣若菜)