住宅防音工事ゼロ、名護市議の24人が「賛同できない」 離着陸繰り返すシュワブ内のヘリパッド、与党内でも見解分かれる<名護市長・市議アンケート>


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沖縄工業高専のグラウンドから約300メートルの位置にあるヘリパッド。飛行禁止区域外からドローンで撮影=2021年9月、名護市辺野古(沖縄ドローンプロジェクト提供)

 【名護】米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの普天間飛行場への配備から、10月1日で10年を迎えた。名護市辺野古では普天間飛行場移設に伴う代替基地が建設中で、完成後はオスプレイが配備される見通しだ。米軍キャンプ・シュワブには周辺集落を取り巻くようにヘリパッドが点在し、集落の上空にはオスプレイが飛来する。琉球新報は26日までに、名護市の渡具知武豊市長や市議会議員26人にアンケートを実施し、辺野古移設問題やオスプレイ配備に関する見解などを聞いた。(長嶺晃太朗、松堂秀樹、岩切美穂、増田健太)

<市議の見解>

▼住宅防音工事ゼロ 24人「賛同できない」

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設で、政府は従来、移設後のシュワブ周辺では米軍機の主な飛行経路が海上となるとした上で、「騒音による影響は大幅に軽減され、住宅防音工事も普天間飛行場周辺での1万数千戸からゼロになる」と説明してきた。辺野古区などでの防音工事は移設後に実施されない可能性がある。こうした政府の見解について名護市議に問うた設問(選択肢)では、公明2人を除く与野党24人が「賛同できない」と回答した。

 公明2人は「その他」を選択したものの、「騒音の基準で決めるべき」(金城善英氏)などと工事の必要性について言及した。与党会派「礎之会」は「辺野古区民とのさらなる協議が必要である」との統一見解を示した。

 現在でもキャンプ・シュワブに隣接する地域では、既存ヘリパッドでのオスプレイなどの米軍機離着陸に伴う騒音が日常的に発生している。野党からは「騒音被害は現時点でもある。さらに住民の生活を脅かすことは許されない」(吉居俊平氏)、「差別的な政府見解である」(石嶺康政氏)と批判する声が上がった。「普天間の比ではない数のオスプレイなどが移駐する予定となっており、騒音が拡大することは想定できる」(比嘉勝彦氏)と懸念する声もあった。

▼事件事故の解決案 現行計画見直しの声も

 米軍普天間飛行場に配備されたオスプレイは、墜落や緊急着陸などこれまで少なくとも17件の事故を起こしている。名護市辺野古への代替施設建設に伴い、懸念されるのがキャンプ・シュワブ周辺の事故だ。住民の安全を守る観点から「解決方法や提案など」を聞いた質問に対し、与党会派の「礎之会」(13人)は「事件・事故発生に対し綱紀粛正の徹底」との統一見解を示した。

 一方、野党11人からは「米軍機撤退」(翁長久美子氏)、「オスプレイ配備中止」(大城敬人氏)、「移設反対」(平光男氏)など、現行計画の見直しによって事故防止すべきだとの声が上がった。

 「民間地域上空での低空飛行訓練など全面禁止」(比嘉勝彦氏)、「日米地位協定の改定で訓練空域や訓練時間を制限する」(多嘉山侑三氏)など具体的な提言もあった。

 与党でも公明の2人は「事故を起こさないよう市民の安全を守っていく」(大城秀樹氏)、「県外・国外に移転すべきだ」(金城善英氏)と辺野古移設反対の立場から解決策を示した。

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市内6カ所配置

 面積の約10%を米軍基地が占める名護市。久辺3区は米軍キャンプ・シュワブに隣接し、米軍機や射撃訓練などによる騒音の被害を受けている。
 市によると、シュワブ内にはフェニックス、レイル、カーディナル、レア、グース、ガンダーの計6カ所のヘリパッドがあり、オスプレイが利用することもある。特にフェニックスは沖縄高専から300メートルほどしか離れていないため、市が撤去を求めている。地元住民からは、代替施設建設後にヘリパッドが撤去されるのか不安視する声も上がっている。


【市議回答全文はコチラ】