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潜在ニーズに「提案力」を磨く 空間プロデュースに総合力 ホテルの内装、飲食や事業所も<暮らしを豊かに・家具の「大川」>6


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大川が家具やインテリアを手掛けた客室=名護市のザ・ブセナテラス(提供)

 ロビーに足を踏み入れると、目の前に青い海が広がり、心地よい自然の風に吹かれる。沖縄の高級リゾートホテルの先駆け、ザ・ブセナテラス(名護市)は開業25周年に合わせて今年7月、全室リニューアルした。天然素材を使った家具などインテリアは大川が手掛けている。

 家具はオーダーメード。メーンで使った白い藤家具はマレーシアの職人の手によって作られた。「難しい要望をしたし、コロナで海外に行けない。上海のロックダウンもあった。その状況でも品質を落とさず、納期に間に合わせられるのはさすがだ」。ザ・テラスホテルズの辺土名朝之総括マネージャーは信頼を寄せる。

 25年前の開業時も大川が担当した。テラスグループ全ホテルのインテリアも手掛ける。

 法人事業を担当する大川外商部の江橋正さんは、コロナ前は毎月、海外の協力工場に出向き、打ち合わせや商品の確認をしていた。しかしこの2年半は海外に行けず、リモートで代替した。「不安もあったが、イメージ通りに仕上がったのはこれまでの信頼の積み重ね」と話す。

 大川が法人を対象とした空間プロデュースを始めたのは35年前。ホテルのオリジナル家具を手掛けたことがきっかけだ。家具メーカーとのつながりや輸入のノウハウがあったため大型案件を受けることができた。

 大型案件を中心に空間プロデュースを展開してきたが、近年は民宿、事業所、飲食店などからの依頼も増えてきた。2年前に法人営業の部門を設置。22年6月期決算では売上高が前期比28・9%増と順調に伸びている。

 空間プロデュースは、依頼主の抱える課題や要望から最適なものを提案し、調達する。時には図面段階から関わり、内装を施行することもあり、総合力が試される。

 「リーズナブルなものにも上質なものにも、専門的に対応できるように進化してきた」。外間いち子専務は従業員一人一人や組織の成長を感じている。

 国内外の一流家具やインテリアをそろえた「THE GRACE」(ザ・グレース)はこの夏、大幅にリニューアルした。力を入れるのはカーテン。maxplusのカーテン売り場と統合し、商品の取り扱いは1500点に増えた。県内一の品ぞろえで、客のニーズに寄り添いながら一歩先を提案する。

 外間専務は「安い、高いだけが判断基準ではない。沖縄の生活の中にはいろんなニーズがある」とする。潜在ニーズにどれだけアプローチできるか。どう組み合わせればそれを満たすことができるのか。提案力に磨きを掛けている。 (玉城江梨子)