「新しい資本主義に大事なキーワードは文化」沖縄の将来を考えるヒントとは 竹田陽介・上智大経済学部教授<WUB世界大会in沖縄>


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竹田陽介・上智大経済学部教授

 代表的な社会実験にマシュマロ・テストがある。子どもに「今食べたらマシュマロを1個、3時間待ったら4個食べていい」と条件を提示すると、多くの子どもは目の前の1個を食べる。将来を考えない「マシュマロ脳」と呼ばれる。マシュマロ脳に対するのは「ドングリ脳」だ。リスが土に隠したドングリは大きな木となって多くのドングリを実らせる。

 新しい資本主義を考えるために大事なキーワードは文化だ。自分にとって大事なものを次につなぐ方法を考える時、文化が大事になる。民族や宗教の対立が頻発するなかで、多様化しつつも協力するには、信頼や共感が重要になる。

 ただ、信頼、共感しすぎるのは決してプラスではないというのが研究でも分かっている。常に会う人ではなくウィークタイズ(弱い紐帯)が役立つ。自分の持っている市民社会の中で共助の精神を持って生きていくことが信頼を醸成し、文化の衝突を回避し、長期的な経済の繁栄につながる。効率だけでなく公平性を考えて生きていくのが、実は新しい資本主義の在り方なのではないか。

 戦後、ハワイが沖縄へ贈った550頭の豚は人口に応じて配分され、繁殖がスムーズに進んだ。公平性につながる意志決定で、長期のことを考えていた。

 沖縄の将来について長期で考えようというのが私が伝えたいメッセージだ。マシュマロ脳を我慢し、ドングリ脳で沖縄の将来を考えてほしい。