国内初、トマト病害のウイルスを沖縄で確認 台湾から侵入か…病原性強く拡大懸念


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国内で初めて確認されたウイルスに感染し発病したトマトの様子(近畿大学提供)

 トマトの生育を阻害する病原ウイルスの新種が、国内で初めて沖縄で確認された。近畿大学大学院の小枝壮太准教授(野菜園芸学)らの研究で明らかになり、同大が2日発表した。台湾からの侵入とみられ、県内で既に発生が報告されている従来のウイルスより病原性が強く、抵抗性のある品種のトマトでも被害の広がりが懸念されるという。

 ウイルスは「ベゴモウイルス」と呼ばれる属で、昆虫のタバココナジラミが媒介して感染し、葉が黄色くなったり、巻いて縮まったりする「トマト黄化葉巻病」を引き起こす。症状が進行すると、開花しても実が付かなくなる場合が多い。

 小枝准教授らの研究チームが2020年3月に県内8市町村で調査し、2市のハウス栽培のトマトから黄化葉巻病の症状と、新たなベゴモウイルスの一種「LELCV」を確認した。LELCVは台湾で2015年に初めて発見されたが、これまで他国での報告事例はなかった。

 台湾ではトルコギキョウ、カボチャ、トマトで感染事例がある。小枝准教授はウイルスの侵入経路について「正直分からないが、台湾で感染が報告された植物か、無症状の草花が何らかの経路で入ってきた可能性もある」と話した。県内では2007年にトマト黄化葉巻病が初確認され、現在は改良された抵抗性のあるトマトが多くの農家で植えられている。感染したトマトを食べても、人体に影響はない。

 小枝准教授らの研究では、従来ウイルスに抵抗性のあるトマトでも、LELCVに感染すると黄化葉巻病の症状が認められた。トマト以外に、3市町村のトウガラシでも感染を確認したという。小枝准教授は「地点数を増やした調査が必要になる。病原性が強いウイルスにも抵抗性を示す品種育成を進めたい」と話した。県病害虫防除技術センターの担当者は「対応を話し合っており、状況を把握した上で情報発信したい」と語った。
  (當山幸都)